第5話 市民エネルギーという考え方
『メルケル首相への手紙』の著者マティアス・ヴィレンバッハー氏は「市民エネルギー」という新しいシステムを唱えます。多くの分散型の発電所により機能し、そこには自治体やエネルギー共同組合や市民や農家と云った地域プレイヤーが参加し、その目標は個人と地域における経済的な価値創出であり、環境保全であるとします。
これを阻止する勢力が既存のエネルギー供給会社です。彼らは古いシステムの中で快適に暮らせてきたのです。分散型エネルギーを認めることは、彼らにとっては死活問題なのです。ドイツは1998年に全面自由化に踏み切り、多数の新規事業者が生まれたのですが、既存大手電力会社の対抗策(安売り攻勢)により新規事業者の倒産が相次ぎました。淘汰されたあと、再び電気料金が上がったのは当然です。その中でもシュタット・ヴィルケ*は残りました。
発電は旧来の一極集中型(大型施設と高圧送電網)から、技術革新によって分散型に移行が可能になったのです。エネルギーは市民の手で作れるようになったのです。
この分散型を利用して、地域資源の活用、地域における雇用創出等が可能となります。地域エネルギー事業の育成は、単にエネルギーサービスに対する需要家のニーズを満たすだけでなく、疲弊した日本の地域経済の底上げにも貢献することが期待できるのです。
*注:自治体公社、上下水道、電力、ガス、地域暖房のエネルギー供給を行う。ドイツでは第三セクを入れて数百の公社がある。写真は4大電力企業との比較。
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