閑話 青い屋根の家(2)

 青い屋根の家はわたしの自慢だった。

 友達に家の場所の説明をする時も

「あの青い屋根の家がわたしの家」

 と言って山の上の方に見えるのを指さして教えた。


 不便な場所だけれど、それを不満に思った事はない。

 それよりも空気の美味しさや眺めの良さや自然に囲まれているのが嬉しくて、小鳥の声にうっとりしたり、森を駆け回ったりしていた。


 家の玄関横の花壇には勿忘草わすれなぐさ

 花壇には、そのあとも色々な花が植えられたけれど、この青い花は印象深く目に焼き付いている。



 実家は何度か補修工事をして、今はもう青い屋根ではなくなってしまった。

 もう”青い屋根の家”では無いのだなぁと少し切ないような寂しいような気持ちになったのを思い出す。


 わたしは大人になり、家もまた姿を変えていった。

 それでも、わたしにとっての故郷ふるさとで大切な魂の還る場所であることに変わりはない。

 

 幼い日に祖母に手を引かれて見た、あの青い屋根の家をわたしは忘れないだろう。


 これからもずっと……。

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