第6話 紅掛空色
時計屋さんから外に出て、自宅に帰り着く頃には既に雨の気配は無くなっていた。
暮れなずむ空を見上げる。
疲れて重くなり、肩にくい込んできた荷物を、よいしょっとずり上げて。
ふぅ…と小さく溜息をつく。
かすかに紅がかったような夕暮れの色、
一日の終わりの空は、いつも色々な表情を見せてくれるけれど、今日の空も、また心に沁みる。
思えば空に魅入るなんてことも、若い頃にはそんなになかったように思う。
毎日を駆け抜けることだけで精一杯で、天候も景色も流れては過ぎていった。
勿体ないことをしたなぁと思いもするけれど、だからこそ今この時に見る、空は、景色は、花々は、こんなにも沁み入るように美しいのかもしれない。
ああ、あとどのくらい、わたしはこんな風に空を見れるのだろうか。
そんなことを、いつの間にか考えるようになった、この人生の夕暮れ時。
だから、尚更、色々なものを、わたしという存在にしっかり焼き付けておきたい。
今、この空も、明日には昨日の空になる。
そう思いながら……
ゆっくりと鞄から玄関の鍵を取り出してドアを開けながら振り向いて……
今日を終わろうとしている
もう一度、みつめた。
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