第5話 瑠璃色
バスから降りた帰り道に近所の時計屋さんへ寄る。
愛用の時計が電池切れになってしまったので。
顔馴染みのおじいさんが電池交換をしてくれている間、並べられている時計を見るともなしに見ている。
あの頃…高校入学のお祝いは腕時計だった。
銀色の金属時計バンドに文字盤は美しい
女性用にしては少し大きめで見やすかったのもあって、お気に入りで何処に行くにもつけていた。
大切に大切に使っていたのに、10数年経ったある時、変わりかけた信号に焦って、転んだ拍子に
よほど強くぶつけたのか、中の針も止まってしまい、泣く泣く諦めた。
肘と膝小僧の傷よりも時計を壊してしまったショックから暫く立ち直れなかったほどだ。
捨てきれずに仕舞っていたのだけど、引越しのゴタゴタなどで行方不明になったまま……。
時計を新調した時も、あの瑠璃色をと探したのだか、あれほどの印象深い青には出会えずに結局、今の時計の文字盤は薄い菫色だ。
これはこれで気に入って大切にしている相棒なのだけど、時計売り場を通ると、ついあの瑠璃色を今でも探しているわたしがいる。
電池交換が終わったようだ。
また規則正しく時を刻み始めた今の相棒を腕に、家へ帰ろう。
雨上がりのアスファルトが濡れている。
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