第2話 薄花色

 前夜から雲行きが怪しくなっていたと思ったら雨が降り出した。

 久しぶりに昔話など遅くまでしたせいか、父はまだ起きてきていないようだ。


 前日の寝る前にしかけておいた炊飯器のご飯は、もうすぐ炊き上がりそう。

 大根と豆腐と油揚げの味噌汁に卵焼き、納豆はねぎ多めで。ほうれん草のおひたしには鰹節かつおぶし、あとは胡瓜きゅうりの漬物、簡単で変わり映えしないメニューだけど許してもらおう。


 雨の中を勝手口から傘をさして庭へ出る。

 昨日、ゆっくり見る暇がなかった紫陽花あじさいが見たくて。

 もう終わりかけだったけど、まだ咲いている薄花色うすはないろの大きく綺麗な一輪を見つけた。


 母は薔薇が好きだったけれど、この明るい青色の紫陽花も大切にしていたっけ。

 以前、母に、父からのプレゼントだったと聞いた覚えがあるけれど、父に聞いてみたことはない。聞いても素直に答えそうにないし。


 そんなことを考えていたら家の中から、父の呼ぶ声がした。


 さて、朝食にしましょう。

 今日は夕方には自宅に帰るけれど、それまでは母の遺品の整理もしなくてはならないし。


「おーい!」

 と、また父の声。

 せっかち度は余計に増したみたい。

 でも人のことは言えないな。わたしもだから。


「はーい!」

 と返事をして急いで勝手口の戸を開けた。

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