めいどかふぇ その10

(先輩には莉央が怒っているように見えたようだが、そうじゃねぇ。もともと不機嫌そうな顔しかできないだけだ)


 微妙に失礼な事言ってますね、ドッペル君。これってつまり、オリジナルの樹々君も同じ事を思っているんでしょうか?


(その刺々しい雰囲気が無くなるのは、彼氏である樹々と一緒にいる時だけ。なら、俺の事を樹々だと思っていないって事だ。バレてないんだ)


 なるほど~。アレが女装した樹々君だと莉央ちゃんが気付いたなら、確実にもっとカオスな事態になっているでしょうし。完璧すぎる女装が相手では、彼女さんでもさすがに見破れませんか。


 ドッペル君はようやく平静を取り戻し、ネコメイドの仮面を被り直します。


「い、いえ、その、可愛い方だと思っただけにゃ」

「!? え、あ、ちょ……い、いきなり変な事言うな!」

「す、すみませんにゃ!」


 顔を真っ赤にする莉央ちゃん。


(うぁぉぉぉぉ……超可愛いぞちくしょぉぉぉぉぉぉ!)


 心の声なのにうるさいですよ、ドッペル君。もぉ、これだから男ってヤツは……。


 と、莉央ちゃんの後ろでニヤニヤしてた毬夢ちゃんが、ぴょんと跳ねるように前に出ました。


「ごめんね、〝いつき〟ちゃん。いつか遊びに行く、って言ったでしょ? 折角だからサプライズにしようかなと思って、友達と一緒に来ちゃった♪」

「毬夢……にゃん」


(来ちゃった♪ じゃねぇよ。潰すぞ)


 若干笑顔が引きつっているドッペル君に対して、楽しそうですねぇ、毬夢ちゃん。まぁ気持ちはすごく分かりますけど♪


 ドッペル君はひとまず2人の〝お客様〟を店に招き入れます。さてさて、どうなりますかねぇ。わくわくしちゃ


「あの、お客様」


 へ? は、はいにゃ! どうかしましたかにゃ? 〝まどか〟にゃん。


「いえ、その、それはこちらが聞きたいのですけどにゃ。さっきから凄い体勢を続けているので、他のお客さんも気になっているみたいだにゃ」


 あ……す、すみませんにゃ! これは、その、ちょっとした体操みたいなものだにゃ!


「そう、なのですにゃ? それならいいのですけどにゃ……ご注文がお決まりになりましたら、お呼びくださいにゃ」


 わ、分かったにゃ!


 ぺこりと礼をしてテーブルを離れるまどかちゃん。けど、明らかに変なものを見る目をしています。うぅ、ショック。


 ……まどかちゃんが近づいてきてる事、気付いてましたよねあなたは! なのにどうして教えてくれないんですかぁ……う、うるさいです。忠告を無視したのは反省してますってば。もぉ、さっきから笑い過ぎですよぉ!

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