すとーきんぐ その3

「……あぁ、さっきのは毬夢だったのか」

「うん? 何の話?」

「少し視線を……いや、何でもない。気にすんな」


 あら、毬夢ちゃんが声を掛けてくれたおかげで、私達の視線と毬夢ちゃんの視線を勘違いしてくれたんですかね~。助かっちゃいました。


「で、何の用だ。邪魔だから帰れ」

「冷たっ! 仮にも樹々君の保護者なのに…………しくしく」

「やるならもう少し完成度の高い泣き真似をしてくれ。保護者だろうと何だろうと、俺の日課の邪魔はさせん」


 日課……尾行、の事なんでしょうね~。そんなのを日課にしてる人、初めて見ました。


……どうして私の事をそんな目で見てるんです? 言っときますけど、私が尾行をするのは今日が初めてですよ?


 それにしては落ち着いてる? うふふ、何をおっしゃるウサギさん。私みたいな乙女が尾行に慣れてるわけないじゃないですか。……だからその目は何なんです? ねぇ。


 ふんだ、もういいです。乙女を疑うような悪い子は放っといて、元気に尾行しちゃうんですから。


「そもそも、大事な大事なオカルト研究会の活動はどうしたんだ」

「それがウチの1年がミスってさ。学校の書庫に封印されてる禁断の魔術書をくすねたのがバレちゃって。今、部長含めた3年勢が言い訳しに行ってるから、今日はオカ研休みになっちゃった」


 そんな色々とおかしな事を何故か胸を張って言う毬夢ちゃん。……あぁダメです。あれだけやっても張る胸が全く無い事に涙を禁じえません。


 はいそこ、同情とか言わない。悪い子は、メッ、ってしちゃいますよ? 具体的にどうするかって? そうですねぇ、例えば目潰しとか……うふふ、冗談ですよ、じょ・う・だ・ん! ね?


「……敢えて突っ込まねぇが、これだけ言っとくぞ。大丈夫かオカ研」

「あ、心配してくれるんだ? だいじょぶだいじょぶ、良くある事だから」

「ああ、悪い。言葉のチョイスを間違ったな。言い直そう。イカれてんのかオカ研」


「ふふふふ、残念だったね樹々君。それは私達オカルトマニアに対する最上の褒め言葉なのだよ。それに多分、学校側もなあなあな感じで終わらせると思うよ? いつもみたいに」

「よし、前提を変えよう。イカれてんのか風見杜高校」


 うふふ、ノリノリですね2人とも。良いコンビ、って感じです。

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