すとーきんぐ その4

 えっと、今ので分かったと思いますけど、毬夢ちゃんはドッペル君の事を宇都宮樹々君、としてではなく、ドッペルゲンガーだと認識してるんです。


 ドッペル君は2週間くらい前、とある河川敷で目覚めたそうです。その時はまだ自分がドッペルゲンガーであることに気付かず、本物だと思ってたみたいですね。


 ですが、本物の樹々君を見つけてしまった。イチャイチャしてる莉央ちゃんも見てしまった。自分がドッペル偽物だと知って、相当ショックを受けたみたいですね~。


 で、その時にドッペル君を見つけたのが、毬夢ちゃんだったのです。


 毬夢ちゃんは莉央ちゃんの親友で、樹々君ともそれなりに顔見知りです。ついさっきまで本物の樹々君と一緒にいたので、すぐにドッペル君が偽物だと気付きました。そして幸か不幸か、毬夢ちゃんは重度のオカルトマニアなのです。


 それでいて校内模試で学年トップに君臨する才女でもあるんですけど、綺麗なバラには棘がある、天才とバカは紙一重、って感じですかね~。本人にとっては愛すべき美点のようですけど。


 まぁそれはさておき、毬夢ちゃんはドッペル君に開口一番、こう言ったそうです。あなた、ドッペルゲンガーさんですか? って。


 それがドッペル君にとっては致命傷だったみたいです。ああ、やっぱ自分はドッペルゲンガーなんだな、みたいな。傷心のドッペル君は、ついつい頷いちゃいました。


 そこからはもう電光石火、狂喜乱舞。服を着たオカルトであるドッペル君を引きずり回して自宅へと帰還した毬夢ちゃんは、母子家庭で唯一の家族であるお母さんにドッペル君を紹介してこう言いました。


『ドッペルゲンガーさんは住むとこがないから、ウチに住んで貰っていいよね!?』

『毬夢ちゃんのお願いだし、勿論いいわよ? 部屋も余ってるし』


 なんという即断即決、付和雷同。この親にしてこの子ありですね~。


 そんな何やかんやがあってドッペル君は今、毬元邸に居候しています。衣食住の全てにおいて面倒を見て貰ってる感じですね~。


……え? 〝困ってる人〟じゃなく〝オカルト〟として飼われてる感じがする? まぁまぁ、細かい事を気にしたら負けですよ?

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