すとーきんぐ その1

 あれ? もしかして、ドッペルゲンガーっていうのが何なのか、よく分からなかったりします?


 だからさっき、全然驚いてくれなかったんですね~。ちょっとショックだったんですけど、これですっきりしました。


 それじゃあ優しいお姉さんである私が、先生っぽく教えてあげますね~。




 それで、ドッペルゲンガーって言葉、まったく聞いた事ありません? 一度くらいはありますよね~? あるって言ってください、話が進まないので~。


 はい、ありますよね! それじゃ、どんな事でもいいので、ドッペルゲンガーについて知ってる事を教えてください。


 オカルト現象? ふむふむ、まぁ間違ってはいませんね~。


 見た目がそっくりなヤツ? なるほどなるほど。


 自分のドッペルゲンガーを見ちゃったらヤバい? あら、意外と知ってるじゃないですか。先生、花丸あげちゃいますよ~。


 まぁ、今言ったようにオカルトの類ですので、明確な定義なんてものはないんですけど、一言で分かり易~く言えば、


〝自分と全く同じ姿かたちのモノ〟が、同日同時刻に全く違う場所で目撃される現象


 ってとこですかね~。ニュアンスがちょっと違うかもしれませんが、もう1人の自分、で間違ってないと思いますよ~。


 で、あの不審者さんは樹々君のドッペルゲンガーだって言いましたよね? あのニット帽とマスクの下には、樹々君とそっくりのお顔が隠れてるってわけです。


 つまり、あの不審者さんはドッペルゲンガー樹々君……長いですね、めんどうです。ドッペル君、にしましょう。


 ……え? 樹々君要素がゼロ? いいんですよ。他にドッペルゲンガーがいるわけじゃなし、私達が分かればそれで……ストップ! こっちへ!


「……? 気のせいか……」


 ふぅ、危ない危ない。ドッペル君ってば、樹々君と莉央ちゃんを尾行しつつ、私達の二重尾行に勘付いたっぽいですね。なかなかの使い手です。


 あ、すみません。いきなり腕を引っ張っちゃって。痛くありませんでした? うふふ、そうですか。良かったです~。


 って、裏路地に無理やり連れ込んじゃいましたね。隠れる為とはいえ、ちょっとヤらしい感じです。言っときますけど、私はそんな変態さんじゃ……え? 見失う? あ、ホントですね、行きましょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る