第4話 初心

「あの・・・ピンクさん」

「どうしたの?志郎くん」

「ここがエバーランドですか?」

「そうよ」

「俺の住んでいる世界と、変わらないのですが・・・」

辺りを見回した。


俺が普段、生活している世界と、何んら変わらない。

童話のような世界ではないと思っていたが、さすがに詐欺だ。


「そう思う?」

「ああ」

ピンクは、クスッと笑った。


「よく、周りを見て。何か感じない?」

俺は周りを見る。


「本当に、変わらないけど・・・」

ピンクは、呆れたような表情をした。


「じぁあ、あそこの本屋さんに、行ってみて」

「ああ」

俺は、本屋さんに足を運んだ。


そして、俺は気がついた。


「じゃあ、次はあそこのゲーム屋さん」

俺はゲーム屋に行って、確信を持てた。


そう、ここは過去の世界だ。

それも、大昔ではない。


つい最近、5年前の世界だった。


「志郎くん」

「はい」

「わかった?君をここに連れてきた理由」

「うん」


人というのは、ふとしたことで挫折しやすい。

その時、なんだかんだいいわけをつけて、ごまかそうとする。

でも、それは逃げだ。


「5年前の君は、輝いたよ。でも、今は疲れ切ってる。

だから、ここに連れて来たの」

「ここに?」

「ここは、人が初心に帰ることの出来る場所。

少しの間、ここで暮らせば、あの頃の自分に帰れる」

ピンク言葉に、俺は立ちつくすしかなかった。


「しばらく、ここで暮らしてみて。君ならすぐに、元の世界に戻れるから」


昔と言っても、最近なら意味がない。10年も昔なら、元の木阿弥。

なので、5年前か・・・


「帰りたい時はどうすればいい?」

俺はピンクに尋ねた。


「君が初心に帰った時、自然と戻るよ」


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夢待ち人 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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