第60話 開戦
アタシ達の知らない機体も数体いる。
新しいタイプの機体か。
そうなると、勢力の配分が難しくなる。
が、やるしかない。
だって、これは戦争なのだから。
やらなかったらこちらがやられる。
ただ、それだけの世界だ。
敵は魔術を用いるが、こちらの主要戦闘術は錬金術だ。
無生物に魂を込める術。命を吹き込む術。
それが、錬金術だ。
魔術で言うと、物質変換、形状変換の魔術に近い。
まぁ、殆ど同じようなものだが……。
――――戦闘が始まった。
地上都市と空中都市の機体同士が激しい戦闘を繰り広げている。
主に白兵戦が多いようだ。
こちらはまだ様子を見る。
敵の状況、戦力をしっかり把握しておかないと、後々の戦況に悪影響が出てしまう。
弾幕や火線が絶え間なく流れ続けている。
空が弾幕と火線、魔術で色褪せる。
――――戦争一色の空色だ。
『よし。我々も突入するぞ』
『はい』
敵陣を取り囲むかのように、後ろから近づいていく。
『よし。全力で近づきながら、
言われたとおりに、背中から
スコープを覗いて、クロス&サークルの真ん中に標的が来るように狙いを定める。
『放てっぇぇぇ!!』
総司令官の怒涛の声が耳に響き渡った。
ゆっくりと引き金を引く。
少し照準から外れたとしても、
緋色の銃弾は敵機の胸を穿った。
そのまま、腰から
スピードを上げて敵に突っ込む。
ここは戦場。
《司令官》と言えど安全地帯にいることは出来ない。
いや、この上空に安全地帯は存在しない。
故に、どこにいても死亡率は変わらない。
だから、どうせなら一人でも多くの敵を殺した方がこちらが有利になる。
今は、取り敢えず戦うことしかアタシにはできない。
どんなに高尚な夢があろうとも、戦争の中では無惨に散ってしまう。
無に帰してしまう。
敵と敵の間から、明らかに戦闘から離脱している機体があった。
何だあれは。
動きが奇妙過ぎる。
二機共動きが可笑しい。
まるで、この戦争を傍観しているかのようだ。
もしかしたら、敵の司令官なのかもしれない。
あの二機が気になる。
何か。
引き寄せられるようなものがある。
――――上空。
天空都市ゼウスがすぐそばにある。
敵の本拠地がもうすぐそばに。
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