第47話 潜入捜査_2
牢屋の中に一人の男の子の姿。
黒髪の男の子だ。
ストレート寄りだが、少し天パが入っている純黒の髪。
彼は俯いていて、俺の存在に気付いていない。
《瞬間移動テレレポートを使って牢屋の壁を抜ける。
「おい」
挑戦的に話掛ける。
彼はゆっくりと顔を上げた。
ああ。こいつは駄目だ。
俺の直感がそう告げていた。
失望をした瞳。
何もかもを諦めてしまった目だ。
「お前は……」
「あいつらの仲間か」とそう言葉を続けたかったのだろうが、彼は口を噤んでしまった。
目を細めて地面を見つめる。
「俺はあいつらの仲間じゃない。見てみろ。あいつらと着ている服が違うし、腕に付けている紋章も無い。これで大抵のことは推測できるはずだ。俺はあいつらの仲間じゃないって。俺は君の味方だ」
「味方?」
「そうだ。味方だ。君はあいつらにわざと囚われた。捕まったんじゃないのか?」
「何でそう思うんだ」
あともう少し。
「君は確かに必死に敵と戦っていた。でもね、俺には分かるんだ。君は本気で確かに戦っていた。でも、それは本気じゃなかった。君は本気で戦っていなかったんだ。俺には分かる」
「何で俺のことを何も知らない赤の他人がそんなことを知っているんだよ」
ふっ。
引っかかったな。
口角を両側に寄せる!!。
「ということは、お前は途中から本気で戦わなかったという事だ」
「貴様、俺を嵌めたのか!!」
「嵌めた? 人聞きが悪いな。俺はお前を嵌めていない。第二世代」
「第二世代……。お、お前は一体何者なんだ」
彼は目を見開く。
「俺か? 俺はネオ・サピエンス第三世代の人間だ。君たちはネオ・サピエンス第二世代の人間なんだろう? 知っているぞ」
「ネオ・サピエンス第三世代……」
彼の瞳に火が灯ったような気がした。
「そうだ。君たちの《能力》を改造して造られたのが我々なんだ。まぁ、今では俺しか残っていないんだけどね。君たちと俺たちの違いと言えば……。なんだろうな。言ってみれば、《能力》と《超能力》の違いくらいかな。俺が知っているのは、《超能力》は《能力》の力を分析して改良したものという事だけだ。彼らが何を目指していたのかは俺は知らん。例え、知っていたとしても、俺は《能力》や《超能力》が兵器として使用されているという事くらいだ。それ以外は俺は知らない。だから、お前が《能力》について知っていることを全部吐け。その代わり。俺はお前の目的に協力してやろう。どうだ? 悪い条件じゃないだろう?」
「……分かった。《能力》について知っていることを全部話す。だから、キーを一緒に助け出して欲しい。この世界を」
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