第30話敵襲再び

 僕とマークウェー中佐は《倉庫》へと向かう。

「何でこんな時に攻めてくるんでしょうか」

「この前、空中都市ゼウスは僕たち《パンドラ》に宣戦布告をしてきたのは覚えているよな」

「ええ。覚えていますよ」


「よし。以前の襲撃は脅しだろうな。《黒騎士》が仲間と敵を両方とも殺しているからな」

 《黒騎士》――――。

 あれに乗っている奴の正体はスパイだ。

 《ゼウス》に所属する諜報機関――――。


 あいつはもう僕の知っているあいつではない。

 だから、今度会うときは殺し合いだ。

 以前のように――――。


 目を合わせた時に僕たちは殺し合うだろう。

 負けない。

 キーの為にも。


 彼女に勝つことが出来なければ、キーの居場所を知ることは出来ない。

 居場所を知ることが出来なければ、彼女を救うことなんて到底できない。


 人型超感覚的知覚兵器サイキッカー(正しくは、識別名:RS―ESP―001)のコックピットが開く。

 円型の空間が現れる。

 コックピットに腰を掛け、起動用のレバーを引く。


 ウィィィィンという起動音。

 翡翠色の空間が広がり、幾何学模様が展開され、前方に機体の最新カメラで映像が映し出される。

 前方の景色。


 操縦桿を前へ倒し、右足のアクセルを踏み込む。

 行け!!!!


 扉が開かれ、真っ青な青空が映し出された。

「行きます!」

 両足に取り付けられた固定装置が外され、機体の脚からジェットが放出される。

 敵の姿はまだ見えない。


 拡張デバイスが鳴る。

 中佐からだ。

『はい』

『僕が最前線を行く。お前は最後尾を頼む。今回は、偵察部隊の情報によると、上空30キロで発見したそうだ。今からだと、10キロから15キロ圏内での戦闘になると考えられる。空中戦は僕たちがやる地上戦とはまた違う戦術を使わなければならない。まぁ、そこら辺は実戦を重ねていくしかないようだな。一旦切るぞ』

『はい。ご武運を』

 僕たちは菱形の陣形になって前進する。


 左右には

 故郷が遠くなっていく。

 小さくなっていく。


 空はどこまで行っても澄み切った空色をしていた。

 魔力探知も全く反応しない平和な世界。


 こんな世界がいつまでも続くと良いのにと思う。

 けど、世界はそんなに綺麗じゃない。

 残酷だ。


『こちら第一部隊。全戦闘員各位に告ぐ。前方から魔力反応を確認。敵性勢力だと思われます』

 緊迫した空気が流れる。

 そこへマックウェー中佐の声。

『確認した。全戦闘員各位、絶対に陣形を崩すな。このまま前進するぞ』


 僕のモニターにも赤い点が示された。

 魔力探知が反応したのだ。


 その中で、すごい勢いでこっちを向かって来る機体が一つ。

 周りの敵性機体よりも二倍……いや、五倍に近い速さでこっちに向かって来る。


 一瞬、紫紺の光が煌めいて見えた。

 次の瞬間、紫紺色の一線が僕のすぐ横を通り過ぎた。

 前方の味方部隊の機体が一体破壊され、紅蓮の爆炎に包まれた。


『て、敵の一機がすごい勢いでこちらに向かってきています。凄い速さです。敵は恐らく《黒騎士》と思われます』

 ――――来たか。

『分かった。それは僕と人型超感覚的知覚兵器サイキッカ―で対処する。お前らは他の奴らを狙え』

『了解』


 戦争が始まる。

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