第29話訓練__2

 それから僕はマークウェー中佐に付いて来る日も来る日も訓練に明け暮れる日々を送った。


 初めにするのは必ず実践だった。

 光輝剣ライトニングソードを用いての実践――。


 死ぬか生きるかの勝負かと思った。

 が、実力差がありすぎると、そんなの関係がない。

 相手に傷一つ負わせることさえ不可能なのだ。


 一瞬でやられる。

 攻撃は防がれるか、避けられるか、流されるし、その隙を突いてマークウェー中佐は蹴りや柄頭を使って攻撃をして来る。

 何度攻撃しても結果はいつも同じ。

 僕の負けだ。


 でも、練習を繰り返しているうちにマークウェー中佐の動きが少しずつ読めるようになってきた。

 いや、目が慣れてきたと言っても良いだろうと思う。

 一週間前よりかは敵の攻撃を受け流したり、避けたりすることが出来るようになってきた。

「それだけじゃない。お前の基礎体力と戦闘技術が身についてきている証拠でもある。驚いたなお前は才能があるのかもしれない」


 特訓を始めて一週間後の特訓の時の会話だ。

「才能……?」

「そう才能だ。君の成長は早すぎる。普通の人の数十倍はあるように思う」


「そ、そんな……。こんなに練習をしているんですから当然でしょう」

 ここ最近、毎日体中が痛くなるまで特訓をしている。

 彼曰く、僕は現在進行形で『肉体改造』をしているらしい。


 彼は首を横に振る。

「これが、当然なことでは無いんだ。とにかく君は吸収力が他の人よりもある。何よりも成長が早い。だから、僕は見ていてとても楽しいのだ。技術力は言わずもがな、肉体面は特に。普通はこんなに早く筋肉は付かないはずなんだが……。能力の影響なのか。金石君はどんな能力を持っているんだ。君は、この前の戦いで魔力光線マジックビームを無効化していたはずだ。人型超感覚的知覚兵器サイキッカーは魔術を使うことは出来ないからな。乗っている人間の能力を使うことが出来るのが人型超感覚的知覚兵器サイキッカーの特徴だ。だから、これはお前の能力としか考えるしかないのだが……」

「いや、僕は……」


 僕は無能力者のはずだ。

 僕は、小さいころから無能力者として蔑まれてきた。

 見下されてきた。

 《無能力者》だと。


 悔しかった。

 こんな力のない自分が醜くて。

 嫌いで。

 嫌で。


 力が欲しかった。


「これはお前の力だ。どんな『力』なのかは精密検査をしてみないと分からないけどな」

 その時、丁度拡張デバイスから連絡が入った。


『敵襲。敵襲。敵は中隊規模が五組襲来してきます。全戦闘員は直ちに倉庫へ向かってください。、繰り返します――――』


「ついに来たか」

 マークウェー中佐は口角を上げ、ニタリと蛇のような笑みを浮かべた。

 ――――獲物を狩る時の瞳。


「金石君。特訓の成果を見せる時だ。君は戦闘センスはある。だから、安心して戦え。良いな」

「はい!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る