第15話

砲列を並べた砲兵の一斉発射が、戦場の神の祝福が響く。着弾と共に大地を穿ち、歩兵はその支援の元、前進する。ライフルの散発的な射撃に、敵部隊は封殺され動けない。勝利は目前に思えた。


━━━━━━━━━━━━━━━

「お姉様、あの様な真似は。」


「なんの事かしら?」


姉上は変わってしまわれた。剣聖と持て囃され、美男子を集め享楽に耽る。不快ですらある。私や姉上は聖教会の信徒である。聖教会は淫欲は罪であると問いている。


「ネクロマンサーです。あの男のネクロマンシーが上等な物とは認めますが…」


人として認可されたとはいえ、人間を死体にしてその死体を弄ぶ様なまねが許されるのか。


「五月蝿いわね。彼らはそれを望んでいるのよ。黙りなさい。」


「……失礼します。」


言っても無駄か。失礼を承知で、足速に立ち去る。自室に戻るとふと窓が叩かれたのを知る。


「誰だ!」


「王国騎士セレナ・ライネルフ子爵殿。私は聖教会ライネルフ教区大司教猊下からのメッセンジャーです。」


黒服の男が1人。だが、実力で子爵位を勝ち取り、王国騎士の称号を与えられた私だ。私では、適わない事がよく分かる。


「…聞こう。」


「では、簡潔に我らが王レマリア王陛下ヴァン様に付いて頂きたい。」


ある程度気付いてはいたがやはり、その事か。


「…何故私に?」


「姉上、アリステラに対して反感を抱いているのでしょう?」


「…それは否定できない。」


「そうですね。一つお聞きしても?」


不可思議な男だ。目の前に居るのに魔力は感じられない。


「…構わん。」


「貴女が動くとすれば幾ら動きますか?」


「姉上の元に居るのが現在8万。これに侯爵軍が4万6000。私の子爵軍は2万8000だが、手元の5000騎以外は領地だ。」


「要望を、兵を率いて領地に帰って頂きたい。貴女の領地は侯爵領に隣接している。アリステラ侯爵領には1万の兵力しか居ないことは分かっている。レマリア王国軍から飛竜騎兵も出す。6000までなら出せる。更に陸戦兵力は2000。如何か。暴君アリステラを止められるのは貴女しか居ない。」


「………分かった。領地へと帰ろう。合図は?」


「エルフを1人つけます。後は遠距離通信で。」


仕方あるまい。私は姉上を止めねばならん。


━━━━━━━━━━━━━━━

「バラン将軍閣下!合図です。命令を。」


「うむ、全騎攻撃!」


飛竜が火弾を撃ち、対地攻撃を行う。攻撃目標はセレナ子爵領から1番近い大都市かつ港湾都市のマリーブルク。6000騎の竜騎兵が上空を旋回し、飛竜よりも大型のワイバーンが大きな籠を下げて現れる。そこから飛び出すのは魔族兵カービンライフルとサーベルで武装した1個空中強襲連隊2000名の精鋭。

更に蒸気機関の戦艦パクス・レマリアを旗艦とするレマリア王国海軍第一艦隊が沿岸部を艦砲射撃し陸戦隊が多数押し寄せる。


「守備隊は侵攻してきたセレナ子爵軍の反撃や防衛に忙しい。主力は無く、ここには現在1000名の歩兵しか居ない。」


「閣下、海軍から軽騎兵隊の揚陸完遂とグリフォン兵の視認です。」


「よし、第三連隊行け!」


さぁ、儂も突撃するとするか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る