第16話
「閣下!防衛戦力が喪失しました。現在は手元に300の歩兵のみ。民兵を含めても全部で500にも満たない。降伏すべきでは。」
「剣聖様から私は領地を任されたのだぞ。」
「…失礼を承知で言わせてもらう。友として君に言おう。彼女は君が好いた彼女では既に無い。」
館の地下に設置された、臨時の指揮所。既に防衛戦力は消滅。幾つもの部隊と連絡は取れず、手元にあるか連絡の取れる内頼りにできるのは代官の私と我が友であり王国騎士のアルベスターの私兵300のみ。
「…仕方あるまい。私は惚れてしまったのだ。だが、君に頼みたい事がある。私の部下達を率いて投降してくれ。私は最後まで戦おう。」
「…決意は固いか。おい、副官。私と彼は残る。貴様は生き残りを率いて脱出せよ。」
「……了解しました。おい、貴様ら我らがアルベスター様を見捨てられるか?」
「断じて否!」
集まった幹部たちは一人残らず私の指揮下に残る事を決意。数刻後、一人残らず、果てた。
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「貴様がアルベスターか。」
「貴様は誰だ?」
レマリア王国軍が設置した野戦病院。それの視察を兼ねて英雄アルベスターの面会に来ていた。
「俺はレマリア国王ヴァンだ。英雄と称えられる、義者に興味があってな。」
「我が友ジルバはどうなった?」
「ジルバ?白髪混じりの黒髪の痩躯の男か?身長は俺と変わらん程度の。」
「そうだ。」
「お前と同じで拘束していたのだがな。隠し持っていた短剣で喉を着いた。」
落ち込む、アルベスター。これは使えそうだ。
「アルベスター。貴殿にレマリア王国騎士と聖シルウェステル勲章を与え、教皇騎士団に配属する。教皇騎士団大尉だ。」
困惑の表情を浮かべる。
「何故私をその様な職に付ける。敵対者だろう?」
「俺はお前のような男が好みでな。友情と忠義に篤く、決して裏切らない。貴様にとって悪い話ではない、貴様はあの女を嫌っていた筈だ。」
「…それは。」
「今すぐ答えを出す必要は無い。ゆっくり考えて貰おう。」
個室を出て現地の商人から借り上げた屋敷に置かれた病院から出る。外には護衛として150名のカービン中隊と銃弾に魔術を込め放つ魔導銃猟兵450の一個大隊の閲兵を受け、前線へと帰る。75mmの野戦砲は間接照準で砲撃可能で敵の立てこもる家屋や掩体壕、掩蔽を粉砕する。
前線で一歩兵として動く俺は魔導カービンを片手に一個中隊で敵司令部の制圧作戦を行っていた。風属性の魔術でセミオートマチックの射撃が可能となり、側面の魔石を換装したり、自ら魔術を展開する事で魔術の発動を簡素化し魔力消費を低減させる効果がある。
「プロフェット・リーダーよりアルファ中隊。ベータ中隊が作戦に成功。これよりチャーリー中隊と呼応し打通作戦を開始せよ。」
魔術師達の改良によりエルフのみの固有技能であった長距離通信術式を短距離化したものの人間も扱える様になった。戦争は変わる。
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