第10話
「先ずは初めましてだな。ヴァン・ヨハネス・フォン・クロードだ。」
「初めまして、俺はナオト、有山直人だ。彼女は奈緒、東山奈緒だ。」
他の勇者達よりサヤカは除くが、しっかりとした理性と戦ってきてついた自覚を感じられる。
「ひとつ聞きたいことがある。」
「何だ。構わない。」
「貴方は転生者では無いのか?」
「なんの事だ?」
「貴方が行った献策や改革の資料を読み漁った。」
ほう。
「貴方の行った事は我々の世界で行われた事だ。」
「世界が違っても人間という物は考える事は同じらしいな。」
「そこです。貴方はハイエルフに超人種の系譜。彼らは人間と同一視される事を忌み嫌い、そう言う教育を受けています。」
「ほう。我が家は開明的でな。」
「嘘です。貴方の祖父が当主の時代は人間差別とも取れる亜人優遇政策を取っている。それが取り消されたのは貴方の兄が貴方の献策を受け入れてからだ。」
「よく調べたな。転生者は意味が分からないが、一つ言えることは時代は変わると言うことだ。」
「貴方はレディファーストを嫌います。理由は女性蔑視も甚だしいからだと。これはこの世界のレディファーストの発展とは違う。」
「そうか。そんな所でボロを出したか。認めよう。だが、それがどうした?」
「現代を知る貴方なら分かるはずだ。」
「人類軍はとまらん。彼らは国を追われた自由フランス軍に等しく我らはナチス・ドイツに等しいのだ。この永き戦いに数多の種族は絶え、旧来の土地を追われた。それを止めるには、我らが彼らを圧倒し、宥和政策を取り続けるしかない。牙を抜き去り、共に友誼を交わす盟約の剣と成す為には。」
「それに私達を使って下さい。隼人は向きません。彼は正義なのです。それは生まれ持ったスペックで他者が劣等感を抱いた事によるが故に頂点に立ったからというだけでも。」
「サヤカは?」
「彼女は別です。なんでも出来る。故に何も出来ない。やる気がない。」
「そうだな。」
【我は盟約を結ばん。勇者ナオト、ナオの両名と我は長きに渡る争いを治め、恒久的な和平を作る為。新たな世界を作る為に盟約結ばん。この誓をもって契約と為し世界に対する呪約たらんと欲す。】
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後の世においてロマーゲス盟約と呼ばれるこの盟約は英雄にて至高なる王ヴァン一世とその、傍らを守る右左両将たるナオトとナオによって結ばれた。彼らは何れも勇者であり知者であった。その威光は今日まで轟く事となる。
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「失礼した。」
「両名、ヴァン王の左右に席を用意せよ。」
衛兵が椅子を持ち両隣に置く。
「それでは続きを始めよう。」
「貴国に対してロマーゲスは秩序を守る為支援は出来ないが対アザリアーノ経済制裁には参加させて頂く。貴国は何をするつもりだ?」
「まず、アザリアーノ領内のエルフが関連する物流を停止する。レマリア王国から流している、民衆向けの食料や医療物資を停止する。」
「成程、我らは魔晶石等の輸出を停止する。商人たちが貴国に輸出しても我々は分からないだろう。」
事実上魔晶石の輸出承認宣言。中立国とは言え、暴走する人類種の隣国のこれ以上の台頭は避けたいか。最悪、自国は支援させられ残ったのは大量の負債と大規模な人口減になりかねない。
「感謝する。」
ここで隣で黙っておくよう要請していたローザに耳打ちし同意を得る。
「対帝国同盟諸国に告ぐ。我らはアルテラ教皇聖下を盟主とし相互防衛条約ディノグリス・レマリア両国の境界の都市ナザレより取りナザレ同盟を締結する。我らナザレ同盟は対帝国同盟諸国に対して宣戦を布告する。この会議終了後。規定の期日を経過後各国へ侵攻する!」
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会議はこの俺の発言で終了。この会議終了後2ヶ月は戦争が出来ない。だからといって守っていはいけない訳じゃない。アンナを解放しメアリのみをレマリアに連れ帰った。彼女は王弟の庇護を受け大病を治癒した経緯がある。故に推しの弱い彼女の性格上逆らえなかった。俺はその様な事をする男を許さない。
必ず俺が殺す。
「メアリ殿。貴方は内政の才がある。俺は貴方に王国宰相の役を与える。」
「陛下、私は罪人であります。不相応でございます。」
「俺が良いと言っている。確かに反感は買うだろう。それに耐えるのが罰だ。貴方は罰を貰った方が嬉しいだろう。そんな理由で才のある人物を逃したりはしない。」
そう、彼女には内政の才がある。彼女は学園卒業後数年で傾きかけていた、ロイゼン侯爵領の状況を改善した。それを逃す手はない。罪悪感と後悔を突き、決して逃がさない。
「俺に捕まったのが運の尽きだ。諦めてくれ。」
「……ありがとうございます。」
「話は終ったか?」
「ああ、ローザ。各地への部隊への展開は終わったぞ。」
「何故、分かる?」
「エルフに伝わる、エルフ専用の通信術式だ。現在改良中だ。魔族にも使えるようになればいち早く連絡する。ローザの侍従にエルフを加えてくれ。」
「分かった。人選は任せる。」
「ああ。任せておけ、俺の従姉妹でも送っておこう。」
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