第6話

「たのもー!」


ある程度、隙を見て取り付こうとしているのに邪魔が入った。


「アルテラさん!」


サヤカに目で問いかける。


「アルテラ・プロフ枢機卿です。」


意を読んだ、サヤカは耳元で囁く。ルキアが後ろで不機嫌になったのは気付いているが後でフォローを入れることにし今は無視する。


「ユウカが心酔してるわけか。」


頷く。成程面倒かもしれない。


「おや、君は誰なんだい?」


「ルクス司教の友人ですよ。猊下。」


「んー、僕の知ってる限り君は某大公ににてる気がするんだけどなぁ。」


「さぁ、他種族には顔は同じように見えると聞いた事がありますから。」


「なるほどねぇ。君、名前は?」


「ロング・ルンターですよ。猊下。」


「その度胸気に入ったなぁ。君は超人種のローラ様の息子か。彼女の息子なら僕は見なかった事にしよう。彼女を殺したここの人間にはうんざりしてるんだ。」


「失礼。俺はヴァン・ヨハネス・フォン・クロードだ。」


「知ってた。聖都の中では何をしてもいい。信徒を巻き込まなければね。」


「それは、勿論。俺が責任を持って行おう。」


「いい事を教えてあげよう。東門の近くに人が1人位通り抜けられる位の壁に穴がある。そこから抜けると良いよ。」


感謝しよう。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

日程を省略する。

商人として入る為に少々の売荷は積んでいる。そこでそいつらを残しておき、囮とする。


「サヤカ行くか?」


「ユウカ?」


「私は、アルテラさんがついて行けと言うから行くだけなんだからね!」


いや、正直サヤカが一緒に連れて行って欲しいというから連れて行くだけで、お前は別に良いんだけど。


「ありがとう。」


指定された通りの塀を抜けようとした所で巡回の神殿騎士団の部隊に発見された。


「ちっ、巡回ルートに変更が有ったか?」


「待て!貴様何をする気だ!勇者様を何処に連れて行く。」


「ルキア、2人を守って後ろに下がれ。」


神殿騎士は50名程。一個小隊程度だろう。

無詠唱で大地棘槍ダグ・ハウトを発動し隆起した棘は神殿騎士の5名を刺し貫く。

流石に反応し2人の騎士が斬りかかったくる。それをかわし、腰の剣を抜き斬り捨てる。

おそらく小隊長であろう、騎士に向かって紫電槍サンダーランスを放ち虚空に紫電が奔り貫く。それを横目に炎槍フレイムランスを10個展開し近くの騎士に向かって放つ。2人は回避したものの、8人は殺す。風刃エアカッターを向け回避した2人の首を刎ねる。風属性超級の女帝風斬覇エアリアル・エンプレスを放ち面ごと騎士を不可視の刃と圧力で30人を纏めて殺す。残った2人に剣を向けると武器を手放して降伏した。


「お前ら名前は?」


背の高い騎士と女騎士。背の高い方が答える。


「ジョゼフ・ハウト上級騎士だ、んでコイツはローランツ・イース騎士。」


「選べ、俺に従うかここで死ぬか。」


「ちょ、ちょっと!そんな殺す事も無かったんじゃないの!」


「黙れ!小娘如きには分かりませんわ!」


「ルキア、気にするな。んで、どうするんだ?」


「ジョゼフ・ハウトはクロード大公ヴァンに忠誠を誓う。」


結構、黙り込んでいる女性騎士。ニコニコと微笑を崩さないサヤカ、煩いユウカ、ルキアは大人しいから良いものの、頭が痛い。


「…ローランツ・イースはクロード大公に忠誠を誓う。」


「なんで、この人に誓えるのよ!目の前で仲間を殺されたのよ!」


糾弾の叫び、平和な世界に暮らしていたと聞いている。この世界は理解出来まい。


「ヴァン、勇者とは随分お嬢ちゃんだな。」


「…子供。」


「っ!どう言う事よ!」


呆れ返っているジョゼフ。ローラは説明する気も無い。


「おいおい、お嬢ちゃん。目の前で同僚40人以上殺されてだ、叶わないと知っていて戦わなくてはならない理由も無いのに喧嘩を売るのは馬鹿のすることだぜ。第一俺は、神殿騎士になったのはこいつの面倒を見る為だ、コイツの為になる方を選ぶ方が賢いだろ?」


「…そう、ヴァンは優しい。私達に戦意が無いの分かってて攻撃しなかった。」


「まぁ、優しいわけじゃないがな。」


理解出来ない物を見る目。多分一緒理解できないだろうけど。


「そんな!サヤカは!」


「私ですか?おかしく無いと思いますけど?」


「だろう?話は終わりだ、早く離れるぞ。」


帰りは大型のワイバーンを利用した航空輸送で帰還する。


小さくなって行く聖都を後目に護衛の竜騎兵にレマリア攻撃を命じた。

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