冒険者編

第39話 AI(愛)の冒険者登録 (前編)

クラン『氷の白百合』と『漢たちの挽歌』は統合されることになった


新しいクラン名は『愛と自由の挽華』


世の理不尽の為に散っていった命を悼み


愛と自由の為に活動していく事を誓い命名された


盟主には『漢たちの挽歌』の元リーダー


その補佐となったのは、『氷の白百合』を切り盛りしてくれていた実力女冒険者


「あなた達になら安心して任せられるわ」


この人選は


愛の鶴一言で決定した


これを機に愛とナノはクランから籍を抜けるした


愛とナノを慕う構成員たちから


残留を求める多数の声が上がった


彼らは愛とナノが除籍する事によって


二人との絆まで無くなってしまのではと危惧していたのだ


「私は一塊の冒険者にになるから」


「盟主なんて大役は出来なくなってしまうけれど」


「クランを抜けたとしても」


「私たちはいつまでも、あなた達の仲間なんだから」


「何かあれば必ず力になるわ」


どんな形であれ


自分たちは仲間なのだと言ってもらえた


彼らにとってそれ以上の言葉は必要ない




この世界に来てから数年が経過していおり


ギルドから是非、冒険者登録をして欲しいと


度々の催促があったが頑なに断ってきた


愛とナノは勇気と一緒でなければ登録はしないと決めていたからだ


勇樹に捨てられたと愛は勘違いしてはいたが


心のどこかで自分の元の帰って来てくれるのではと期待しており


誤解なので当たり前なのではあるが、勇樹は愛の元へ帰ってきた




愛は今までため込んだ思いを勇樹に打ち明け


すっかり機嫌を直した


一日のうち愛が勇樹の腕を離す事が無いのではと思わせるほど


二人はともに時間を過ごした


最初は周囲も驚愕したが


人は離れる期間が長い程


その思いは積もるもの


数年間


それはAIである愛にとって一瞬であるはずの時間


だが、自分を捨てた(と思っていた)勇樹は


もう自分の元へ戻ってこないかもしれない


毎日が不安で堪らなかった


愛にとってのこの数年は


永遠の様に感じていた




「愛殿は勇樹様の家族同様の間柄だと聞いております」


「しばらく家族と会えないのはさぞかし寂しい思いをされたでしょう」


使い魔の特権と称して


散々勇樹に過剰なスキンシップを取っていたリーウが身を引いたほどだ


身を切る思いだったに違いない


「フフフ まぁこれもつかの間のこと」


「勇樹様のお側はやはり使い魔である私の立ち位置」


原状復帰に向けての情熱が燃え上がっていた




『白銀の魔狼』ことルナも


今では勇樹を「兄様」と呼び


すっかり懐いていた


愛が右腕であれば


ルナは左腕を獲得していた


お陰で勇樹は見た目は両手に花状態であった


「しまった! 勇樹様の腕は2本! この私としたことが」


「狼如きに後れを取るとは」


最強生物たる竜も色恋沙汰になると


からきしダメダメ状態であった




「わ 私は別に勇樹なんかとくっつきたくなんておもわないんだからね!」


「まぁ勇気がどうしてもって言うなら女神として願いをかなえてあげてもやぶさかではないけど!?」


女神アスタルテの発言は悲しくスルーされた




「っち 勇樹が帰ってきた途端色気づきやがって」


(こんなことなら勇樹の身体から出るんじゃなかったぜ)


何時も強気な発言をしているが、ナノも勇樹の不在を寂しく思っていたのだ




世界殲滅兵器の器を持つ愛


超高性能ナノマシンのナノさん


数百年の時を生き抜いた強力な魔物『白銀の魔狼』ことルナ


龍族の中でも強大な力を持つ緑石竜エメラルドドラゴンのリーウ


そして完全ではないにしろ女神の封印を水から説いて見せた女神アスタルテ


超生命体の力を封印し武者修行で力を獲得した勇樹


この6名が今日初めて冒険者の登録をするのだ




何も起こらない訳がなかった



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る