第38話 AI(愛)の与えた身体

異世界への壁を超えるため


勇樹は超生命体に生まれ変わった


愛が与えてくれた新たな身体は


異世界への転移後に起こりうる


あらゆる可能性も考慮されていた




彼の身体は


環境に適応するために


襲い来る脅威を退けるため、強化され


時には、新たな機能が追加されるように設計されている


その逆もしかり


無駄だと判断されたものは分解され


新たな機能の素材となるべく万能物質に変換される




ムハイに師事するための条件として


『コズミック・ジェネレータ』は停止された


そして自分の主は停止以前よりもより大きな力を手に入れた


合理性を考えれば。『コズミック・ジェネレータ』は無用の存在




『現在の状況を分析した結果』


『『コズミック・ジェネレータ』の有用性は無くなりました』


『即時分解し、万能物質化が最適だと判断されます』


『実行されますか?』




『いつも僕の為に、いろいろ考えてくれてありがとう』


『でもね この身体の中に無駄なものなんて一つも無いよ』


『全てが大切でかけがえのないものなんだ』


『だから答えはNO』




それは感情的で、全くもって非合理的な判断


だが何故だろうか


それが間違っていると判断し難い


そして主の意思に反する事は絶対にありえない


故に勇樹の身体は


無用であるはずの『コズミック・ジェネレータ』の存在価値を


ひたすらに考えつづけた




今の構造では機能が重複しており有用性は見いだせない


ならば違う役割を獲得するしかない


現在、体内で魔力と『気』が循環しているが


本来、陰と陽の性質を持っている以上打ち消し合う


世界のあらゆる存在は陰と陽の性質を持っている


だが世界はその力を消滅させることなく維持し続けている


ならば、相反する力を維持する第3の力が存在するはず


『均衡』そして『融合』の力が




そして


とうとうその存在を見つけた


そこから試行錯誤が始まる


機能として当たり前の動作でしかない


何かにつけて主はそれに対し


『いつもありがとう』


と発言する


全くもって理解できない


だがその言葉をかけられると


作業効率が飛躍的に高まるのは何故だろう


そしてたゆまぬ努力が


遂に実用段階にまでこぎつける


こうして『コズミック・ジェネレータ』は生まれ変わった


融合反応炉フュージョン・リアクターへと


現在、相殺されている魔力と『気』を


事前に吸収し融合させ、体内へと還元する


これが稼働を開始すれば


エネルギーの損失はほぼ完全に解消され


主の存在は更なる高みに至るに違いない


だが今は、その時ではない




だから、待ち続ける


主がその力を必要とするその時まで



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