第35話 AI(愛)の再会 4/5
「今使っている力を捨てられるか?」
(コズミック・ジェネレータの事かな?)
勇樹は驚いた
男が自分の体の秘密を一目で見抜いたからだ
(コズミック・ジェネレータ稼働停止)
「おいおい! そんなあっさりと止めていいのか?」
「ワシが刺客の一人だったらお主死んでおるぞ?」
「僕が本気を出しても あなたには到底敵わないと思います」
「それに殺す気なら」
「僕はとっくに死んでるでしょ?」
「グハハッ! 気に入った!」
「ワシの名はムハイ お前の名は?」
「僕はユウキです よろしくお願いします」
「ユウキ お前に『気』についてみっちり仕込んでやる」
「だが俺は厳しいぞ 死ぬなよ? ガハハハッ!」
(豪快な人だな)
本当に『死ぬかもしれない』と思うことになるとはこの時は思いもよらなかった
そしてムハイと名乗った男が伝説の人物であることも
「女神に『気』なんで必要ないわ 」
「私には全能の力『神力』があるんだから オホホホホ!」
アスタルテは『癒しの聖女』としての務めを果たしに
早々に広場へと出かけて行った
ムハイが気を悪くしないか
少し心配だったが
「ほう あのお嬢ちゃんアスタルテと言うのか」
「回復術師じゃったか」
「まぁ 鍛錬とは無理強いするものではないしの」
「しかし、貧しきものに無償で癒しを与えるとは」
「見上げたものよ ガハハハッ!」
むしろご機嫌だった
と言う訳でマンツーマン指導が始まった
そこで勇樹は二回目の選択を迫られる
「まずお主には二つの道がある」
「1つ目は『気功法』を学び『気』を極める道」
「2つ目は魔力と『気』を同時に扱う技法を極める道」
「はっきり言おう 2つ目は容易な道のりではない!」
「じゃが極めればもはや武具など不要」
「自身の身体が鎧となり」
「手足が武具と化す」
「この世に敵は無し」
「このムハイの様にな」
「ガハハハッ!」
(これ完全に二つ目を選ぶパターンだなぁ)
「二つ目でお願いします!」
「おお! よくぞ申した!」
勇樹の読み通りだった
お陰で師匠はご機嫌だ
「まずは『気』とは何か?」
最初に、ムハイは『気』の概念を簡単に説明してくれた
「魔力と『気』はそれぞて陰と陽の性質を持っておる」
表裏一体の存在
その源流は同じである事
「故に、魔力と『気』を同時に使おうとする者は居らん」
正反対の性質を持つ力は、お互いを打ち消し合うからだ
「ワシ以外はな!」
そう彼は違った
遠い昔の伝承には
魔力と『気』を同時に行使できる使い手について記された文献が残っている
だが
「ワシは武者修行で世界中を旅したが魔力と『気』を同時に使う者はついぞ見なかった」
「両方を極めるには、人族の寿命は短すぎるからかのう」
残念そうに語るムハイ
そうやら今では使い手は彼以外に居ないようだ
「ちなみに師匠はおいくつ何ですか?」
「ワシか? 500を過ぎてからは数えておらん!」
「ガハハハッ!」
まさかの500歳オーバーだった
(一体500歳になってから何年経っているんだろう?)
聞けば顔見知りに9人ほど1000歳オーバーがいるらしい
「まぁ仙道の極致は『不老不死』じゃからのう」
その『不老不死』あたりは
すでにクリアしている
と言っても過言ではない勇樹
魔力と『気』を同時に使う方法の説明に入る
主に二種類あるそうだ
「先ずは『魔気合一の法』」
魔力の元となる魔素
そして気の元となる精
それらを特殊な方法で練り上げ一つの力と成す
「まぁこれはワシも出来んから無視してよし!」
ではなぜ説明したのか?
謎である
「そこでもう一つの方法『魔気対極循環の法』じゃ!」
「これはワシが独自に生み出した技法でな」
から始まり
長々と完成までの艱難辛苦の物語と共に説明されたが
どうやら魔力を『気』をタイミングをずらして循環させることによって相殺効果を防ぐ技法
という事らしい
(これは思ったよりも手こずりそうだ)
(でもそれだけの価値はある)
そう確信できる
「感覚を言葉にするのは至極難しい」
「直接お前の体で再現してやるから」
「体で覚えろ!」
ムハイは感覚派師匠だった!
むんずと肩を掴まれ体内にある魔素と精を操作される
『魔力操作』と『気操術』を同時に行う
根源を同じくする力の元たる
魔素を集め魔力とし
精を集め『気』とする
そしてゆっくりと対極を保ちながら循環させていく
他人の魔力と『気』を操るのは困難を極める
人は防衛本能でそれを拒否するからだ
だがムハイは自由自在に操って見せる
「どうじゃ感覚は掴めたか?」
「はい 何とか出来そうな気がします・・・」
勇樹ははっきりとは応えられなかった
彼の習得速度はお世辞にも早いとは言えない
現に今までの道場では全ての師範が見放したほどだ
だが彼は今までの師匠と違った
「なぁに ゆっくりでいいんじゃ」
「人の歩みの速さはそれぞれ違うもの」
「決して焦るな」
「さりとて正確さは心掛けろよ?」
「そうすれば必ず体得できる!」
「不器用なワシが体得出来たんじゃからな」
「お主に出来ん訳がない」
「がはははは!」
「はい! 頑張ります!」
(いい師匠に巡り合えた)
勇樹はこの出会いに感謝した
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