第12話 AI(愛)の異世界転移
「じゃあ行くぜ しばらく眠ってな」
ナノさんことナノマシーンの集合意識がそう告げる
勇樹の意識が遠くなる
ナノマシーンが勇樹の身体を作り変えていく
鋼のように強靭で、バネのようにしなやかな肉体
無機物と有機物が融合したハイブリットな生命体
勇樹は『超生命体』へ生まれ変わろうとしていた
目が覚めると世界が違って見えた
実際には変わっていないのだろう
全ての感覚が研ぎ澄まされ、まるで全方向を見渡せるかのようだ
身体を動かしてみる
まるで自分の身体とは思えない滑らかなで力強い動き
正に『全身に力が漲る』ってこういう事なんだと勇樹は思った
「この身体なら何だってできる」
込み上がる全能感に酔いしれそうだ
(調子はどうだ? どこかおかしいと思うところはねぇか?)
(まぁ 俺の仕事に間違いなんてねぇけどな!)
ぶっきらぼうな物言いだが、その言葉の節々に勇樹への気遣いが伺える
(人生で最高の気分だよ)
(今なら何でもできる そんな感じがするよ)
(そうだろう? そうだろうよ? へへへぇ!)
まるで職人が自分の作品を褒められた時のように喜ぶナノさん
作品が勇樹自身だと言うのが、何とも不思議な気分だ
「用意は良いみたいね」
「あれ、愛の姿が見えないよ?」
「何時もの3Dディスプレイに愛の姿がない」
「今は情報体として勇樹の身体を間借りさせても立っているわ」
「身も心も1つって感じよね」
「残念だが それはねぇなぁ 俺が居るからよ」
「ナノが邪魔ね 出て行ってくれる?」
「あほか! 異世界言ってから誰が勇樹の面倒見るんだよ?」
「それじゃ仕方ないわねぇ」
「僕の身体に3人が同居してるって事だよね なんだか不思議な感じだね」
「勇樹よぉ お前は幸せってもんだぜ」
「なんせこのナノさまっていう最高の美女が同居してやってるんだからよ」
「いやぁ ナノさんの姿見たことないし 実感ないなぁ」
「バカ ナノマシンだぞ ボンキュッボンって自由自在だっつうの!」
「惚れるなよ ば~か!」
何故怒られる?納得がいかない勇樹だった
(勇樹の身体のチェック終わったぜ!)
(オールグリーンって奴よ!)
(万能物質のストックは?)
(亜空間への充填完了!)
(それじゃあ、異世界への転移ゲートオープン!)
勇樹の首、両手首、両足首にはめられた5つのリングが発光する
眼前に穴が開いていく
(これがゲート?)
(そうよ そしてそのゲートの先に見えるのが異世界よ!)
確かに空いた穴の向こうに景色が見える
空中に浮かぶ島
そこから流れ落ちる滝
空中を遊泳する巨大な生物
大地から生える巨大なクリスタル
(うわぁ まさにゲームに出てくる世界そのものだよ!)
(早くしないとゲートが閉じてしまうわ)
(急いでその穴に飛び込んで!)
(ようし 行きま~す!)
勇樹の心はこれから始まる冒険を思い昂っていた
ある日、元先輩の元に手紙が届く
後輩がやりたいことを見つけ旅にでる
そう書いてあった
自分の会社に引き抜こうと思っていたのですこし残念
だが、自分と同じように、彼がやりたい事を見つけ一歩を踏み出すのだと思うと嬉しかった
「頑張れ! 体壊すなよ」
後輩の笑顔を思い出しながら彼を激励する先輩だった
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