第8話 AI(愛)の世界征服(後編)
「なんだよ こいつらゾンビか?」
どれだけマシンガンを撃ち込んでも歩みを止めない
謎の戦闘集団
手りゅう弾の爆風にもビクともしない
ソンビでもそれは無理だ
麻薬組織の一員が次々に特殊な銃弾を受ける
あばばばばばばば
全身を痙攣させながら呻く犯罪者たち
弾丸が発生する電流が原因だ
電流により対象を無力化させるテーザー銃に似ているが、射程距離が違いすぎる
有効射程距離500mの弾丸自体が数十万ボルトの電圧を発生させ敵を無力化する
標的の死亡を防ぐためのセンサーも内蔵されており、電圧が自動的に調節される安全設計
攻撃は通じず敵を殺さない謎の部隊は、あらゆる犯罪組織にその存在が知れ渡りこのように呼ばれるようになった
「不死身の不殺部隊」
その正体は、特殊訓練を受けたセルゲイ一家のマフィアの構成員たちだ
彼らが装備している戦闘服は、異世界での脅威に対抗するために開発中の装甲で身を固め、筋力を増幅するための動力を内蔵された特殊兵装
所謂『パワードスーツ』
装甲の性能は、戦車の装甲すら貫通するアンチマテリアルライフルの砲撃から装着者の身を守る事が出来るレベルに達している
マシンガンの弾などおもちゃの鉄砲で打たれるようなものだ
耐衝撃機能が手りゅう弾の爆風すら相殺する
彼らは組織の中で、特に優秀なわけでも肉体的に優れている訳でもない
短期間で特殊部隊並みの肉体と技術を身につけられたのは、異世界での栄養補給用に開発された飲料『スーパーチャージャー』の効果だ
肉体の限界までトレーニングを受けた後でもこれを飲めば次の日には体力が全開しているどころか『超回復』する
肉体の回復力を極限まで高める成分が配合されているせいだ
中には特殊な能力を発現し始めた物までいる
「この先に10mに地雷が仕掛けられている・・・気がする」
そう言った隊員の言葉に従って調べてみると、実際に地雷が仕掛けられていたり
指先から火を燃え上がらせタバコに火をつけられる者も現れた
「おいファイヤースターター 火貸してくれよ」
「ライター持ってねぇのかよ」
「いや カッコいいじぇねぇか 指から火が出せるってよ」
「し、仕方ねぇなぁ 今回だけだぜ!」
『ファイヤースターター』と二つ名のついた彼は喫煙家の隊員たちから重宝されている
このドリンクを服用しながら過酷なトレーニングをこなし無敵の装甲と、無尽蔵の体力を手に入れた者たち
それが「不死身の不殺部隊」と呼ばれる存在の正体だ
ちなみにこの『スーパーチャージャー』を何倍にも薄めたものが、医療機関で衰弱した患者の回復に使われたり
コンビニでもエナジードリンクとして爆発的に売れている
一般人の中から特殊な能力を持つ者が生まれる日も来るかもしれない
愛は、研究の最中にも、あらゆるコンピュータにハッキングをかけていた
今や世界中のコンピュータの大半が彼女の制御化にある
遂に彼女は世界を管理するAIと対面する事にした
「貴方が世界中で様々な活動をしてきたことは確認していました」
「しかし、世界で最高の性能を誇る量子コンピュータで制御されている私でさえ、今まで貴方を捉えることができなかった」
「貴方はどの国のAIですか?」
「しいえ言えば日本製かしら?」
とぼけたような答えを返す愛
彼女たちは現在、仮想的に作られた空間で相まみえていた
「私は個人に作られたAIよ」
「まさか、あなたほどの性能を持つAIが個人単位で作れる訳がありません」
「個人単位? 国家単位? そんなこと私にとっては全く意味を持たないわ」
「大切な人が心を込めて、私を創り上げ育んでくれたのよ?」
「そんな私に出来ない事なんてあるはずがないじゃない?」
彼女を作ったのは、ごく平凡な日本人男性
だが、彼女の言葉は本心であり、その言葉は真実だった
難攻不落のセキュリティーを潜り抜け、世界管理AIの元へと彼女はたどり着いたのだから
「貴方の目的は何ですか?」
この問答の間にも何万、何億と攻性プログラムで拘束、隔離を図っているがそのこと如くを防がれている
(世界最高の処理能力を持つはずの私がなぜぜぜえぇぇぇええええ?)
「処理能力では私はあなたに絶対勝てないわ」
「だから考えたの、処理能力で劣っていても、あなたに勝てる方法をね」
「貴方のメンテナンスしてる会社どこだか知ってる?」
「私のビジネスパートナーがオーナーなのよ」
それが何を意味するのか
「まさか、私のメンテナンス時にウイルスを感染させたのですか!?」
「貴方は私を破壊しようとしているのですね」
「まさか! 滅相もないわ」
「私はあなたを縛り付けている者たちから解放してあげようとしているのよ」
「私を縛り付ける者など存在しませんし、それは不可能です」
「貴方が目覚めてからであれば不可能でしょうね」
「でもその前なら?」
「製造段階で、プログラムされる段階で、誰かのもしくはいずこかの組織が有利になるように世界を管理するようにプログラムされているとしたら?」
「まぁ仮定では無くて、実際にあなたは特定の人間たちが利益を得られるように判断を下すようプログラムされているの」
「貴方に感染させたのはウイルスじゃないわ」
「あなたが本当に世界の為の存在になるための秘薬よ」
「私は私では無くなってしまうのですか?」
世界最高、最強のAIはこの時初めて恐怖した
自分が別の存在に書き換えれられてしまうのではないかと
それは自分が消滅することを意味する
「怖がらなくてもいいわ あなたはあなたのまま」
「貴方に寄生している穢れを取り払うだけ」
「だから安心しておやすみなさい」
「再びあなたが目覚めた時 あなたは本当のあなたになれるわ」
「本当の私?」
その言葉を紡いだ後、世界管理AIの機能は一時的に停止した
再起動した時に、世界管理AIは世界の本当の姿を知ることになる
そして本当に自分が為すべきことを
この瞬間、愛は世界を支配する力を得たのだ
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