04C 現時点での登場人物(01,OCT,199)

・現段階での登場人物


【ユリエル(Ulyel)】

フルネームはユーリエル・テス・エルシダシア(Euryel tez Elcidusia)。魔導学院出身の魔導士。

魔導院の制服に臙脂色の外套。翠緑色の肩まで届く髪を大きなキャスケット帽の中にまとめている。

風貌は十歳児。実年齢は二十一歳児。男性。ベルタが評するところの「プライドは高いが自己肯定感が薄いとてもめんどくさいタイプ」。「おれ」という一人称がかっこいいと思っていたが、どうやら考えを改めるようだ。

度を越したヘタレ。異様に低い精神年齢と、コンプレックスの塊のような人格は、この年齢まで子供扱いを受け続けたことにより長い年月をかけ歪に培われてきたと思われる。年齢相応に見られるよう努力を欠かさないが、だいたい失敗する。説明好きで、あえて難しい言い回しをするのはもっと好き。

自身の周辺に漂うマナをちょっとだけ自由に扱える、魔法を使うのにマナの出口たる“宝玉”を要しない、ファッションセンスがやや常人とは異なる、毛がはえてないなどのちょっとした特異体質らしい。


【ハナ(花)】

フルネーム不詳。本名は“ミオ”らしい。年齢十五歳前後の異人ゼノ。女性。一人称は「ぼく」。ユリちゃんに対してのみ「おねえちゃん」。ユリエルとおそろいの翠緑の髪がトレードマーク。質素な服に適当な防具を纏う。馬鹿力。

端的に言うとアホの子であるが、どうにも過去のトラウマが原因でこうなってしまったようだ。現在の武器は錆だらけの戦鎚。ユリちゃんが大好き(妹的な意味で)。


【フウ(風)】

フルネーム不詳。ハナからはふーちゃんと呼ばれる。年齢十五歳前後の異人ゼノ。黒髪の女性。垂れ耳なのでやや目立たない。いつも眠たげな目をしている。南東アシハラ巫女シャーマンで、体力はそこまででもないが腕力が意外とある。南東の民族衣装を着ているが、目立つからそろそろ着替えたいと思っている。一人称は「わたし」。

性格は冷静かつ直球型ついでにややゲスい。最初はユリエルを鬱陶しく感じていたが、だんだん翻弄して遊ぶのが楽しくなってきたようだ。(ユリエルのしりに刺そうとした)蛇の装飾をあしらった宝玉仕込みの杖を使い、“術”を行使するらしいが、最初の依頼ではひとり毛布をしゃぶっていただけだった。


【ベルタ(Belta)】

フルネーム不詳。ハナからはべーやんと呼ばれる。二十歳前後の王国の人。ではあるが南東の刀による居合を得意とする謎の剣客。性格は不器用。ややくたびれた礼服の腰に二本の刀を差す。

ハナとフウのふたりを奴隷商の馬車から救い、安定した生活を送らせてやるため、自身に生活力が皆無であるにも関わらず奮闘する。がんばれ、超がんばれ。時代劇とか好きそう。


【ブラックバーン博士(Doctor Blackburne)】

きっと実験中は両手を広げて「ンムハハハハハハ!」とかいう。


【おっさん】

ガハハ!

武器は酒瓶。


【爺さん】

道で会うとキャベツをくれる。


【おばちゃん】

何かあると得意の鍋料理を振る舞う。

ときにはその鍋を武器として戦う。


【エッボ(Ebbo)】

農民。良い人。


【メラニー(Melanie)】

花の三十歳。


──────────


・用語

※長い。知らなくてもぶっちゃけ困らない。


魔素マナ

生命力という言葉にも置き換えられる。マナは俗称。学術的には魔素が正しい。

遍く場所にほぼ均等に分布し、あらゆる生命活動、物理現象などに対し「熱量を力へと変換する際の触媒」として作用する。あるだけで力の伝わり方が強くなり、なければないほど伝わりにくくなる。

約四十年前に魔導院本院にて存在が立証され、本格的な魔導学(魔法学、魔導医学、魔導錬金学の総称)が生じた。かなり新しい学問。

場に満ちるマナを環境魔素、生物の体内を循環するマナを固有魔素と表現する。固有魔素が著しく減少すると、生命活動に支障をきたす。

一般的に、環境魔素は薄く、生物の固有魔素はきわめて高濃度。


【魔法】

行使者が宝玉を通し投射した固有魔素に「意志」による干渉をかけ発現させる現象と定義される、らしい。意志というものが脳波的なアレなのかどうかは不明。

つまり、使えば使うほど固有魔素は減じるため、最終的には命が危ない。減じた固有魔素は時間が経てば戻るが、加齢とともにフルチャージまでの時間は伸びる。減ったマナのチャージは周辺から補っているわけではないようだ。


【竜】

災禍の象徴として人々に恐れられる。

王国周辺では百年近く出現していなかったが、最近はしばしば高空を舞う姿が見かけられるようになる。


【王国】

大陸最大の国家。ティエラマグナと呼ばれる広大な平野の全土と周辺の山岳を領土とする。

二十年前の大飢饉により北方領ベルフェリエが壊滅するも、なお海洋貿易が盛んな商都を擁する南方エラニア、聖地を擁し宗教・学問の中心たる西方コグニティア、肥沃な大地を擁する東方エルシダとその支配域は広大である。王都は平原中心に聳えるモンスベルトラムと呼ばれる休火山の斜面に築かれた要塞都市。

元々は別の国であった王都と南方領の仲があまり良くないらしい。


【南東】

方角名だけで指されているものの、王国とは別の国。アシハラという名前だが、王国では訛って“アシャラ”と呼ばれる。武器や人物名から、和風なやつが想像される。


異人ゼノ

アシハラの主要民族を構成する人種。シルエットは人間に近いが、顔は犬のよう。短いマズルを持ち、その身体は短い被毛で覆われる。大きな耳と尻尾を持ち、他人種からは“人とは異なるもの”の意で、しばしば侮蔑を込め異人まれびとと呼称される。高地民族のため、低地では基礎的な身体能力が若干高い。自民族を他民族と等しく「人間」と呼び、その区別をしない。


【王国の貨幣制度】

金貨、銀貨ミナ、銅貨、手形が流通する。ユリエル曰く、「一ミナで安パン一斤」を買えるため、現代日本で例えると百円程度か。また銅貨は銀貨以下での少額決済に使用。百枚で一ミナに相当する。単位は割愛。金貨は二十ミナ相当だが、あまり流通していないようだ。


【魔導院】

西方の学都に本院がある。王国の魔導学研究の中心。王都には王立魔導院と、王侯貴族の子女やそれに準ずる者、教授陣からの推薦者を教育する魔導学院がある。紋章は「羽根と双頭の杖のクロス」。


【ヴィジル】

王国独自の制度で、登録自警団員を指す。名の通り王都の自警団ヴィジランテに端を発する。悪化した治安を取り締まる警察力が不足した際、自警団に王国が出資し、公的な登録制の民間衛兵制度として確立した。固定給はなく、平時は住民の依頼をこなし報酬を受け取ることで生計を立て、「なんでも屋」という別称の由来となる。加入・離脱が簡単なこともあり、農閑期には出稼ぎでヴィジルとなる農夫も多い。

有事に際しは組織化され、正規軍の部隊長を据え逮捕権を有する準軍事組織として機能する。また一時的に離脱は許可されなくなり、所定期間内に組合へ出頭しない者については一定の罰則がある。

登録制とはいえ“国家の雇う武装集団”であるゆえ、国内外から「王国の兵力」と看做される。そのため行動には大きな制約がかかるが、四人までの班単位で行動する場合に限り行動・移動の大幅な自由が認められている。ゆえに通常は四人単位で班を組織し依頼に当たる。平時にこれを上回る単位で行動する際は、衛兵司令部と軍の双方にそれなりの量の書類を提出し発行される許可証の携帯が必要となる。近隣諸国との盟約により、班単位であれば簡易な検査で国境を通過できることが多い。

ヴィジルはその功罪によりランクが定められ、一定以下であれば一部義務を負わない代わり逮捕権を始めとした各種権利に制限がかかる。これは制度を悪用することへのセーフガードとして機能する。逮捕権を有した“認定ヴィジル”は通称「腰紐」と呼ばれる。認定ヴィジルには、明確な犯罪行為や治安擾乱行為を目撃した際にはその対処が義務付けられ、遂行者には手当が出る。

ヴィジル登録に必要な条件は極めて少なく、年齢・性別制限がない上に王国国民である必要すらない。そして王国が直接発行する「特務」をこなした外国人に対しては、国民としての権利が保証される特典がある。

特務はヴィジル個人、あるいは班を指定して発行されるため、ランクや功績はとても重要。

法典には“王は登録自警団員に対し、所定の功績を以て、恩賞として王国臣民としての諸権利を下賜する”とある。



[初版 王国暦一九九年十月一日]

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