第2話 ドラゴン
痛い痛い痛い
空が青い。
身体は痛くないが、全身が痛みを覚えている。逃げなくては、と思うが記憶に押し潰されて動けない。震えが止まらない。いや、ダメだ。ここにいては喰われる。空に影はまだない。走れ、走るんだ。物陰はないのか。なんでこんなにだだっ広いんだ。荒野だ。ところどころ灌木はあるが、全身を隠せるほど大きくはない。どうしたら。考えながら、とにかく真っ直ぐ走る。今までなら、すぐに息が上がるところだが、今はどこまでも走れそうな気がする。
足元に影が落ちる。思わず見上げる。
腐臭が顔にかかる。身体が真っ二つに千切れた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い
空が青い。どうしたらいいんだ。逃げられないのか。反対側に逃げたら、見つからないかもしれない。走れ、とにかく走るんだ。そうだ、鎧を脱いだらもっと早く走れるんじゃないか。でもそんな時間も惜しい。あっちに草むらがあるじゃないか。飛び込め。これで隠れられる。首筋に風を感じる。腐臭だ。腹わたが飛び出し
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
空が青い。
ループものってやつか。死に戻り、なんて小説もあったっけ。ここが新宿でないのは重々わかっている。逃げ切れないなら闘うまでだ。幸い、武器はある。自分の身体も、戦士のような筋肉のつき方をしている。きっと闘える。やるしかない。
足元に影が落ちる。
見上げると、剣を両手で構える。口の中を目がけて剣を突き上げる。柔らかな喉を貫くと思った瞬間、牙が剣を噛み砕く。次のひと噛みで両腕が千切れた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
空が青い。もう何も考えられない。逃げるのも億劫だ。寝転んだまま、空を見上げていると、空に黒い滲みが生まれ、次第に大きくなり、やがてドラゴンになった。
おれの胴体は3つに千切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます