第49話 ハイジャンパーのニャゴロ―


 ポカポカいい天気である。

 このような日は木陰で爽やかな風を浴びつつ昼寝と洒落こもうか。


 八百屋の棚に並んだ野菜へ栄養を与える為に自ら肥をまき散らし、魚屋へは売り物が鮮度を落とさぬよう脇を流れるドブ川からせっせとクッサイ水の運搬アンド放水作業を繰り返し、飲食店に至ってはまな板と呼ばれる調理道具へ何度も何度も全身を擦りつける。

 

 あまりの忙しさ故、ついつい休憩するのも忘れておったわ。

 このままでは熱中症とやらにもなりかねん。

 作業効率を上げるためにも暫し休息を取ろうではないか。


 小腹も空いたから昼休憩も兼ねていつもの食堂へ行くとするか。

 こうして我輩は商店街とは真逆の方向にある公園へ向かうのであった。



 ふぅ、流石に日の当たる場所ばかり歩くのはキツイな。なるべく日陰を選んでいたのだが、案の定ゴミ虫に嫌がらせをされ直射日光の当たる場所を走らざるを得なかった。


 ※ドブ川の水関係で自らの腹を壊し、バイク屋到着と同時に大脱糞をかましたせいで店主の怒りを買う。稀に見る大激怒のバイク店店主の鬼の形相を目の当たりにし、あまりの恐怖で日当たりなど構ってられず道路のど真ん中を只管公園へ向け走り抜けた


 あのゴミ虫の事だ、蛇のようにしつこく我輩を探してこの公園へ辿り着くに違いない。警戒するに越したことはない、最低限の自己防衛でもするとするか。


 公園の顔とも言われる園内随一の大きさを誇るクスノキ。樹皮の隙間に爪をかけてトントントーンと軽やかに上って行く我輩は、手頃の枝を見つけるとそこでまあるくなって一休み。

 睡魔に誘われうつらうつらとしながらも園内の様子を伺うこと小一時間、いよいよ意識がすっ飛ぶといったその時、ヤツは現れた。


 「ニャーン」


 ニャン吉である。

 どうして奴がここへ?

 しかもニャン太郎を探している?


 「ウニャン」


 あ、ニャン太郎が現れた!

 おろろ?

 ニャー吉にニヤも一緒ではないか?


 なんだあの笑顔は?_

 我輩と一緒の時は一度も見たことないぞ?

 ハハァーン、さては我輩へのサプライズの相談だな?

 ならば逆に今ここでキサマ等へのサプライズとして我輩が空から舞い降りるとしようか!


 

 ニャゴロ―は木の上から空中ダイブ!

 一人だけ仲間外れにされているのではと一瞬頭をよぎるも無理やりのポジティブシンキングでそれ等全否定の大ジャンプ!

 キャパを超えた思考を重ねた為に精神的不安定となり、落下中の体勢も不安定に!

 

 {グキキ!}


 着地失敗!

 両前足首複雑骨折!

 しかも転倒のオマケつき!

 アクシデント重複による着地ポイントの大幅ショート!


 「バウッ!」


 そこへバッドタイミングでゴン太君急襲!

 (動物軍団の集まりを見て自分も仲間に入りたいとテンションが上がっての突撃)


 「グヘニャンッ!」


 正面衝突!

 弾き飛ばされたニャゴロ―はそのまま川方向にある茂みの中へ!


 「ガルルルルルッ!」


 得体の知れぬ野獣の咆哮!

 同じくしてニャゴロ―落下ポイントで激しく揺れる草木!

 一瞬水面が赤く染まるも、流れがあるせいですぐ元通りに。


 これ等一連の騒がしさを他所に、この場にいるはずも無いニャゴロ―が事故に巻き込まれただなどと知る者も無く、何事も無かったかのよう他の動物達による井戸端会議は続く。


 こうして一匹の猫ジャンパーは星となった。

 


 『どうぶつ会議にて』


 「最近ニャゴロ―ってウ〇コ臭いよな」

 「だね。いっつもお尻の毛が黄色いよね」

 「彼、お腹弱いのに変なモノばっかり口にしてるわよねぇ?」

 「オイラ朝方魚屋の前を通った時、ドブ川の水を飲んでるのを見たぞ?」

 「もしかしたら病気なんじゃね? あたまの?」

 「あたまも病気だって!? ……暫く近づかないほうがいいかも」

 「オッケー、ニャゴロ―無視な」

 「無視な」

 「な」

 「バウッ!」


 そのうえ一匹の猫ちゃんは無視となった。

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