第48話 サッカー選手のニャゴロ―
なんとも心地よい乾いた空気に包まれるこの季節。仕事も苦になるどころか捗り過ぎてああ忙しい。
そんな我輩は見回り警備も兼ねて、いつものようにカリカリババアの来る時間を見計らいつつ公園へと足を運んでいた。
どうしてだって?
そんなのオヤツ休憩を取るためだバカモノめが。
でないと労基にひっかかるではないか。
一匹言を言いつつ川沿いを歩いていると、突如として張り詰めた空気が我輩を包む。同時に目覚めたニュータイプの才能が”そこだ!”と叫ぶ。勿論脳内で。
「ニギャアァァァァァ!」
「フギャアァァァァァ!」
我輩の睨んだ方向とは正反対の真逆から聞こえてくる断末魔にも似た猫の悲鳴。しかも二匹。
出所を確かめる為に見晴らしのいい小高い丘の頂上目指して猛ダッシュ!
途中、日常的に園内を走り回っている人間ども(ジョギング及びランニング中)の股をひらりひらりとすり抜ける。
「うおっ!」
「うわっ!」
{ゴロンゴロン}
人間の繰り出した足が着地する瞬間を見極めサッと通り抜ける。驚きで咄嗟に繰り出した足を止める人間はリズムが狂い、地面を捉える足があさっての方向を向くと同時にバランスを失いスッテンコロリン。この時グキッと耳障りの良い音が聞こえてくるのが病みつきとなる原因なのだろうな。
「フーッ! フーッ!」
おっとっと、いつものように話がアルタイルまでワープしてしまったな。我輩の悪い癖だ。
そしてどうやら鳴き声はこの茂みの向こうから聞こえてくるようである。となれば我輩の取れる行動は一つしかあるまい。この茂みを潜ってだな……。
{ガサガサ}
原因が間近に迫った次の瞬間、事件は起きた。
「フンギャアァァァァァァァァァッ!」
なんと二匹の猫が茂みの中から飛び出して来たのだ!
しかも取っ組み合いをしながら!
その姿はまるでロニャウドの放った弾丸シュートではないか!
直撃すれば猫なんてのしイカのようにペッタンコとなってしまうぞ!?
しかし案ずることはあるまいて。
我輩とて元プロリーグに所属していたプロサッカー選手(の足元に纏わりついてうっとおしがられていた)猫の誇りがある。
出来るものならこのアルゼチンコのニャゴロッシを抜いて見せよ!
直後、一匹の猫が喧嘩玉に弾き飛ばされた。幸いにも少し離れた茂みに落下した為、全くの無傷で済んだ。が、どうやらそこは運悪く新井君一家のスィートホームだったようで、最早文字で表せぬほどの酷い仕打ちを受ける羽目となったのであった。
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