第35話 (横取り)漁師のニャゴロ―


 熱玉が天高くギラるこの季節。

 暑さを紛らわせる為に様々な動物達が凉を求めて水へと戯れる。

 おかげで毎日のようにどこぞかしこで起きる水難事故。


 成長しきった動物はスイミングなる自己防衛術を習得しているのだが、問題はチビッ子。

 悲しいかな、まだまだ身体共にお子ちゃまな連中の犠牲が最多となるのは致し方ない。

 弱きものを容赦なく切り捨てる自然界。

 成熟するのがいかに難しいのかと身につまされる、


 そんなワケで、少しでも犠牲者を減らす為、このニャゴロー様が一肌脱いでやろう。

 ライフセイバーのライセンスを所持しているこのニャゴロー様がな!

 ※猫に免許制度はありません



 最も事故が多い公園ラッコ塒付近。

 護岸はコンクリートで固められているも、所々植物が茂っているポイントがある。

 あそこだけは土なのか、その辺りからラッコは出入りを繰り返す。

 ※ラッコ=ヌートリア


 そんな事を言っている傍から子ニャンコがヤツの近くへ!

 危ないっ!


 電気自動車のトルクフルな出足より鋭い加速でコンクリートの斜面を駆け下りる!

 もう少しで前足が子ニャンコへと届くと思ったその時!


 {ドンッ!}


 「ニャッ!」


 あかん!

 勢い余って背後から押してしまった!

 となれば当然……


 {ドップン}


 時を待たずして水面は沈黙。

 何事も無かった様に静まり返った。


 ところが!

 間もなくそんな静寂を裂くような打撃音が辺りへと伝わった。


 {ピチピチピチ!}


 お!

 小口バスではないか!?

 もしや子ニャンコは魚を捕まえていたのか?

 ※天涯孤独で飢えていた子猫を哀れに思い、ヌートリアが時々魚を与えていた

 

 そして事故にあったんだろうな。

 この時期最も多い水難事故に。

 ご愁傷様。


 だが、魚をこのままにしては子ニャンコもうかばれないであろうな。

 仕方がない、我輩が捕らえたと恩着せがましくニャン吉かニャー吉へ恵むとするか。

 幸いこの川の漁業権は我が手中に収まっていることだしな。

 ※猫にこの川の漁業権利などありません


 

 この数日後、強烈な腹痛に顔を歪ませる二匹の猫が様々な場所で目撃される。

 共通するのはどちらも排せつ物に無数の寄生虫が蠢いていた。

 その原因はさて……。

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