第27話 カスタムショップのニャゴロー
言わずも知れたゴミ虫バイク店。今日も汚物主人が異臭を放ちながらせっせと仕事に励んでいる。
「おー、ニャゴロ―か。今日はお前に構ってやれないんだよ。なんてったって年の瀬で忙しいからな。もし邪魔なんかしようもんなら……わかってるだろうな?」
顔を合わせて早々毒らしき言葉を吐きかけるゴミ虫。
しかし我輩のお下劣拒絶センサーが働き、瞬時に聴覚と嗅覚をシャットダウン!
よってヤツの言葉は想像の域を出ない結果に。
「ふぅー、午前中はここまでだな。飯にするか」
ベシとな!?
得意技の読唇術でヤツの口元をなぞると確かにベシと呟いたぞ。
ハハァーン、あれだな?
ここに並ぶ数ある粗大ごみをネコパンチでベシっとやれとのことだな?
与えられた仕事にやりがいを覚えつつ、早速とりかかる。
先ずはこの”真っ裸SS”ってやつからだ。
{ベシガシッ!}
ムムム?
我輩のかわいらしい前足ではにっちもさっちもいかぬな?
なにせコヤツは巨大で重量感半端ない。
こうなれば猫海戦術でなんとかするしかないな。
「ゥニャーン?」
我輩があれこれ考えていると、イラっとする鳴き声がどこからか聞こえてくる。
眉間にシワを寄せ、触る物全てを切りつける鋭い視線で辺りに探りを入れると、そこには不愉快なシルエットが。
「ウニャ!?」
ニャン太郎ではないか!
まるで全身に汚水を浴びたのかと思わせる薄汚く黄ばんだ白色の体毛に変死体の浮かぶダム湖色を連想させるその瞳はぱっと見シャムネコとダブるがそうではない。正真正銘駄猫の彼は本家のニヤと比べるまでもなく下品で不潔、悪い意味でパーフェクトなのだ。
そのバッチィ彼が我輩の前へと姿を現したのである。
ナーイスタイミングゥ!
そして我輩は彼に向かってこう言った。
「ミャーオミャオ」
要約すると、”あのまあるいダチョウの卵(燃料タンク)を複数匹で激しくネコパンチすれば中からクサヤが飛び出すぞ”ってな感じ。
「フギャ!」
ダッシュで姿を消したニャン太郎が一瞬チーターに見えた我輩。しかし残念ながら顔が小さくスタイリッシュなサバンナのスプリンターと比べられるのは態度のデカさぐらいしかあるまい。もちろんニャン太郎はチーターのように実力を伴っていないがな!
その数分後、バイク屋から不思議な板金音が複数聞こえ始め、それ等は和音となって辺りへと響き渡る。暫くして、雷よりも激しい中年男性の怒鳴る声が街全体を揺らしたかと思えばそれは直ぐに収まり、やがてはいつもの静寂を取り戻した。
そして次の日、ゴミ虫バイク店の店頭に並ぶ古臭いバイクの燃料タンクは全て起毛仕立てのイカした造りとなっていたそうな。それ等はまるで本物の皮を張り付けたような三毛やシャムなどのリアルな猫模様があしらわれていたそうな……。
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