第23話 テレワーカーのニャゴロ―
ここ数日、世の中が騒がしくなっている。
なんでも世紀末の到来だとか、ハゲマルダシ(ハルマゲドン)が接近しつつあるなど穏やかでない噂が巷を駆け巡っているのである。
その第一歩として得体の知れないウイルスがこの星を覆い、感染イコール死ぬとかなんとかで人間達が大パニックへと陥っているのだ。
おいおい人間どもよ、冗談はキサマ等の飛び出たへそだけにしておけよ?
どんな薄汚い環境でもブラックサファイアの如く生き延びてきた人間が、こんなウイルス如きで全滅するワケなかろう?
まぁ、総人口の三分の二程も命を刈り取られれば収まろうて。
しかし笑ってばかりもいられないのは事実。
なぜならこのウイルスは我等動物にも害を及ぼすから。
つい最近、我輩の知る野良猫がこの細菌にやられたようで、その症状はあり得ないぐらい尋常ではない。
注:情報源はニャー吉
ニャン吉は全身を赤く染め、フラフラと商店街を彷徨う姿が目撃された。
きっとウイルス感染による意識混濁及び倦怠感によるフラツキであろう。
赤色はバカだから紅しょうが漬けてあるビンにでも飛び込んだのであろうな。
注:魚屋から小鯵をパクろうとして店主に捕まり半殺し
ニャン太郎も、やはり全身赤いペンキに浸かった状態でマムシ蒲焼き屋裏の用水へ浮かんでいたのを肉屋に保護されたのだとか。彼はその後行方不明となったのだが……。
きっとヤツもウイルスにやられたんだろうな。
全身ピクピク痙攣しての酩酊状態だったそうだからな。
それを助けるだなんて肉屋の主人はなんと懐の大きな人間よ。
注:ウナギ屋のウナギを盗んだのはいいが、毒のある血を全身に浴びて呼吸不全を起すと、今度は普段からニャン太郎を目の敵にしている肉屋がそれを目撃、全身麻痺して動けなくなって用水へハマった彼をそのまま拾い上げて店内へと消えて行った
そんな感じで表に出れば感染の危険があると、現在外回りの仕事を自粛しているのだ。
だからと言って仕事を休むなど、仕事師の名が泣く。
我輩だってメダカの卵並のプライドは持ち合わせておる。
よって自宅でも仕事が出来るよう、我輩はこう考えた。
インターネッツなどを介して自宅で仕事をする、所謂テレポーテーション(テレワーク)を!
注:美也と一緒に見ていた警察二十四時の間に流れた地方ニュースで学習
そして我輩はテレポーテーション(テレワーク)を実施すべく、インターネッツの環境が整った小織殿の部屋へ。
しめしめ、上手い具合に小織殿は深い眠りについておる。
目当てのお宝はっと……あった!
ふむ、このカチャカチャマシーンによく似た折り畳み式の分厚いノートを使うんだな。
おっと、ロックがかかっておるではないか!
やりおるな小織殿め!
だがしかーし!
こんなもの、カチャカチャマシーンのスペシャリストであるミーにかかれば造作もないわ!
さぁ我輩の仕事ぶりをご堪能あれっ!
この数時間後、三河家の玄関に緊急外出制限を示す真っ赤な旗が掲げられた。
それはIT大手ビーグルで働く長女小織の使用する仕事用ノートPCが初期化された直後から半永久的に。
そしてよく目を凝らすと、その赤い旗には薄っすらハチワレ模様が見えるだの見えないだのと近所で話題となるまでに楚程時間を要しなかったそうな……。
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