第22話 医療従事者のニャゴロ―


 この度未曽有の事態へと陥っているこの惑星。

 いや、この惑星に塒を置く人間達と言ったほうが正しいのか。


 どうやら未知の細菌が蔓延し、これといった手立てもないまま日々を怯えて過ごしているようなのである。

 そのせいで人間達はマイスゥートホームへと閉じこもり、外出できないストレスのせいで誰もがイライラしているのである。


 我等猫族はこの細菌と相性がいいのか、感染しても特別これといった症状がでない。

 それどころか、感染したのかさえも分からない程に影響ゼロなのである。


 だがしかーし!

 これは我輩達の体内に侵入した細菌にのみ限ってのこと。

 人間の体内へ侵入したヤツ等はその勢力をドンドン伸ばし、やがては命さえ奪うこともあるのだとか。

 そのせいで行動を抑制された彼等は先程も述べた通り、常に鬱憤が溜まってイライラカリカリしているのだ。

 

 ここからが本題である!

 そのストレス解消の道具として我等ペットが被害を被っているのである!


 坂の病院にいるビーグル犬やニヤなどは癒し効果を認められて可愛がられている。

 これが正当な人間たちによるストレスの解消方法。


 ところが我輩や野良軍団はどうだ?

 ニャン吉は昨日魚屋付近で目撃されて以来、その姿を誰も見ていない。

 一部三毛猫柄のボロ布を商店街のエルドラドで見かけたとの情報もあるが、気のせいであろう。


 ニャー吉は全身円形脱毛症となっており、理由は決して口にしない。

 違う筋から八百屋の裏手に多量の猫の毛らしきものが貼り付いたハエトリガミがあったとの情報を得るも、そもそもハエトリガミがなんなのか我輩知らないし。


 ニャン太郎は酷く怯え、動くものへ極度の反応を示し、何モノも半径5ニャンコメートル以内に近づけさせないのである。

 野良にしては美しいシャムネコカラーだったはずの彼が、ダルメシアン宛らの全身ドット模様となっていたのになにか関係があるのだろうか?


 しかし憶測もここまで。

 我輩は遂にその答えへと辿り着いたのである!


 ”全ての悪事における犯人は美也殿”


 そうなのだ。

 人間によるストレス解消なのではなく、正確にはイライラ美也殿から八つ当たりされているのである!


 なぜそう言い切れるのかだって?

 フッ、バカな事を聞くものだな。


 坂の病院にある特別室で、ヒヤリと冷たく、まるで寝転んだだけで生命を吸い取られるような机へ括り付けられている我輩を見れば誰でもその答えへと導かれるだろうに!

 目の前へ大小の包丁やらハサミを並べられれば気付くであろうにっ!

 ニギャアァァァァァァァッ!


 「いつもこの旧手術室を貸してくれてありがとう。私も奥様みたいに猫のスペシャリストとまではいかないまでも、猫の体の構造を見極める為に頑張るね! じゃあ今日はこのニャゴローを使って早速ご教授頂けますか?」



 医療従事者の(真似事をする美也の餌食となる)ニャゴローであった。

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