第19話 システムプログラマーのニャゴロ―


 今日は人間界でいうところの休日でサン曜日。

 普段せわしないこの町もこの時ばかりはのどかな空気に包まれる。

 

 しかしゴミ虫は世間の波に逆らってこの日も店をオープンさせている。

 そう、貧困層に部類される小張家。

 中でもその最底辺に位置する彼が店を休む余裕などあろうはずもない。

 ※ニャゴローが勝手に思っているだけでバイク屋はサービス業だから定休日は平日


 ゴミ虫はムカつくがチチママやチチ娘には普段から世話になっている我輩。

 仕方がない、彼等一家を路頭へと迷わせない為にも一肌脱いでやるとするか。


 

 店の前に到着した我輩。

 警戒しながら店内を覗き込む。

 

 いつもなら速攻ゴミ虫が飛んできて我輩にお縄を頂戴しようとするのだが……。

 ハテ、なんだかいつもと様子が違うな?


 奥の机に向かって難しい顔をしているゴミ虫。

 一体どうしたのだろうか?

 

 ……それにしても見れば見る程にブサイクだな。

 しかも同時に吐き気を催してくる。

 ヤツは生きている時点で犯罪者と違うか?


 「月末は面倒だなぁ。しかし税理士など雇う余裕もないしな……ちょっとここらで休憩するとしよう」


 お、ゴミ虫が机から離れたぞ?

 チャ~ンス!


 軽業師をも凌ぐ身のこなしで素早く卓上へと駆けあがる我輩。

 そのままゴミ虫とにらめっこしていた謎の画面付き折り畳み箱の前へ。


 {カチッ}


 あ、なんか踏んだ!

 まいっか!


 画面の手前にある多数のスイッチ群。

 無意識に踏んでしまったらしい。

 

 お、画面が変化した!

 もうちょっと前へ……


 (カチッ}


 あ、また踏んだ!

 全面文字だらけ!


 なにがなんだか分からない我輩はビビッて後ずさりをしてしまう。

 すると!


 {カチッ}


 「ニャッ!?」


 あかん!

 後ろ足でスイッチを踏んだせいかバランスが!

 

 {ゴロン!}


 {カチカチカチッ!}


 やってもうた!

 スイッチ群の上へと横たわってしまった! 

 早い話が……コケタ!


 {シャァァァァァ……ガリガリガリガリ}


 勝手に動き出した!

 非常に嫌な予感がするっ!

 こんな時は……そう、脱出だ!


 成層圏を突入する隕石よりも素早く逃げ出す我輩!

 ゴミ虫が席を外していたこともあり難なく逃走に成功!

 ニャーッハッハ!



 ―― その数十分後 ――


 「ふぅ、腹一杯だ。さて、経理の続きを……あ、あれ? 何だこの画面は? 初期化が終わりOS再インストール開始しますかだって? ハハ……ハハ……ハ……」


 小張バイク店はこの後暫く毎日がサン曜日となったそうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る