第17話 猟師のニャゴロ―


 我輩は今、とある場所にいる。

 しかも呼吸を殺して。


 

 先日ゴミ虫ん家の裏にあるチチママ専用ビニールの被った畑で用を足そうとした時のこと。

 突然空から摩訶不思議なカラクリが降ってきた。


 「チッ、墜落しちまったな。ドローンってのは結構操縦が難しいんだな」


 キサマのせいかゴミ虫っ!

 我輩ビビッて自分でしたウンコの上へと座ってしまったではないか!


 「フニャアァァァァァァッ!」


 「おろ? なんだニャゴロ―よ、いたのか?」


 とぼけるなゴミ虫めがっ!

 のほほんとした顔をしよってからに!

 明らかにそのカラクリは我輩をロックオンしていたぞ!


 「わははははっ! なんだお前? お尻のまわりがウンチでベッチャベチャじゃないか!」


 なめるなよゴミ虫がっ!

 ぶっ殺してやる!


 恥をかかされた我輩は全爪を剥きだし縦横ナナメとあらゆる角度からゴミ虫を攻撃!

 しかし!


 {バリバリバリッ! シャアァァァアッ!}


 「おぉっと! おいおいそんなムキになるなよ?」


 グヌヌ、憎たらしいことに我輩の攻撃はことごとく空を切る!

 時々当たるパンチもゴミ虫ではなく畑のビニールへ!

 おかげでビリビリのズッタズタに。


 「ちょっと騒がしいわねっ! 一体なにを……あぁっ私のイチゴ畑が!?」


 チチママの登場。

 呆れた感じで我輩とゴミ虫の格闘に目を向けるも、瞬時にその顔は……阿修羅へと変化!

 これはあかんやつや! 


 「ヒィッ! かかかかか母さんや……こ、これはニャゴローが全て悪戯でやったんだよ? お、俺のせいではないしぃ」


 相当に焦っている様子のゴミ虫。

 頭がパーになったのか我輩を指さし訳の分からない言葉で言い訳をしている。

 

 ニャハハ!

 なにが我輩のせいだ?

 コヤツは何を言っておるのだ?

 せーんぶキサマが悪かろう?


 チチママはそんな咄嗟の出まかせで騙くらかせる程間抜けではないぞな?

 天罰を受けるがいい!


 「ニャゴロー、これは流石にお仕置きが必要ね。ちょっとこちらへいらっしゃい」


 我輩の首根っこを掴んでひょいと持ち上げるチチママ。

 ハテ?

 どこへ連れてくの?

 いや、悪いのはゴミ虫であって我輩では……


 この後一切の記憶がない我輩。

 気付いたら坂の病院だった。



 そして今に至る。

 コノウラミ、ハラサデオクベキカ。


 復讐の方法はこうだ。

 ゴミ虫ん家の裏側庭園脇にある柿の木とやらへ身をひそめ、ヤツが盆栽とやらを弄りに来た瞬間に全爪立てて襲い掛かるのだ!

 豹のハンティングと同じ手法で仕留めてやる!

 キィィィィールユゥゥゥゥーッ!



 この数時間後、再びニャゴロ―は坂の病院のお世話となる。

 バイク屋主人の手により搬送された彼の全身にはおびただしい数の棘が刺さっていた。

 柿の葉を好物とする電気虫こと〝イラガ〟の餌食となったのだ。

 この時素手で運んだバイク屋主人の手にも被害が及び、ある意味復讐は成就した。

 

 だがしかし!

 その代償はあまりにも大きすぎたニャゴローであった。

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