第16話 航空猫便ニャゴロー
「ほらほらニャゴロー、戦車みたいでカッコいいわよ!」
美也殿の魔の手により、我輩のまあるい背中へある物が装着された。
それは〝ちくわ〟である。
そう、我輩もそうだが、あの額に十字傷のある忍び犬の大好きな穴の開いたハンペン。
「プププ、それで表へ出たらどうなるんだろうね?」
結局面白半分である。
なにかの実験ってワケでもなく、これをこうすればこうなるとの確証もあワケでもない。
単なる悪戯。
「さあ行ってらっしゃい! 近所中にその雄姿を見せつけてくるのよ!」
玄関からメジャーリーグのピッチャーもちびるダイナミックなスローイング!
美也殿のナイスコントロールでゴミ虫ピンそば手前50cmで背中から着地!
{ドゴッ!}
「グヘニャッ!」
激しい激痛と腰椎損傷による下半身まひといった軽度の怪我で済んだのがせめてもの救い。
もし我輩が完全な野良であったならば無傷だったであろう。
「おおっと! ニャゴロ―じゃないか? いったいどうした?」
「ニャーン」
起き上がったと同時に間合いを即座につめ、尻尾ピン立ちでゴミ虫の足に絡みつく。
どうだ!
これならば戦闘民族の貴様でも容易に攻撃は出来まい?
媚び売り防御魔法とでも名付けようか。
「クッ、そんなカワイイことしてもだな、俺は騙されん……あれ? お前背中に何つけてるんだ?」
見つかった!
この恥ずかしい姿を!
いや待てよ?
もしかするとゴミ虫が取り外してくれるのでは?
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「これでよし! ほら、公園でその傾いた姿を皆へとお披露目して来い!」
甘かった。
所詮コヤツはゴミ虫。
どうやら我輩は背中のちくわになにか他のアイテムを装着されたらしい。
先程に比べて重みが三倍ほどになったから間違いない。
一体どんなオプション装備を追加されたのやら。
まぁ仕方ない。
とりあえずはゴミ虫の言う通り公園にでも足を運ぶとするか。
そうすれば他の仲間がなんとかしてくれるであろうしな。
こうして我輩は足取り重くいつもの公園へと向かうのであった。
この日、夕暮れの黄金色に光る空の中で不思議なシルエットが浮かび上がった。
それは空想上の生物ペガサスが、その大きな翼を羽ばたき神々のいる天へと向かうようにも見えたとか。
答え合わせ:バイク屋主人はちくわの中へ生肉を詰め込んだ。道路ど真ん中をのうのうと歩くニャゴローはカラスにロックオンされたのちピンポイントで背中のちくわを鷲掴みされる。しかしちくわと一蓮托生のニャゴロ―、自らの意思とは関係なくそのままカラスに連れられ空へと消えて行ったそうな。
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