第11話 衛生管理者ニャゴロー①
今日も仕事に勤しむ仕事師の我輩。
営業も兼ねて得意先への顔だし。
真っ先に訪問したのは商店街へ続く道の途中にある駄菓子屋。
正確には店先数メートル手前の電柱陰に身を低くしての営業活動。
店主へはここから念力によるご挨拶を敢行。
勿論先方からの返事は皆無。
それどころか現店主である先代孫娘がヘンテコな機械|(スマートフォン)に夢中となって来客者をガン無視真っ最中。
いくら客の大半がチルドレンだからと言って、それは流石にやる気なさすぎであろう?
地獄に落ちた色ボケババァの代わりに我輩が試練を与えてやるとするか。
そしてそのチャンスは直ぐに訪れた。
これも日頃の行いが良い我輩へのご褒美なのであろうな。
「ちょっとアンタたち! 少しここを離れるけど、勝手に商品を持って言っちゃダメよ!」
「ハーイ」×複数人の子供達
そう言い残して孫娘は奥にある母屋の方へと行ってしまった。
チャ~ンス!
「おい、この中のお菓子をちょろまかしてもバレないんじゃね?」
「だな! おばちゃんが戻ってくる前にずらかろうぜ!」
「あ、あれ? あの猫何してるんだろ?」
我輩は透明の容器に入った菓子類のみをロックオン。
得意の前足捩じりでオレンジ色のキャップをくるくるーっとな。
するとあーら不思議!
蓋は簡単に外れて床へと転げ落ちた。
「……なんかあの猫妙に慣れてるな? 本物の泥棒猫か?」
「おい見ろよ!」
なめるなよ人間めが!
誰が泥棒だ!
ブッ殺すぞこのクソガキ共が!
おっと、これは我輩としたことが大人げない。
盗っ人(猫)に間違われるなどとの侮辱で、つい腸が煮えくり返ってしまった。
年端のいかぬ子供達の戯言など無視して仕事に集中集中っと。
そして蓋の空いた容器へ超衛生的な片前足を突っ込み、中にある味付きイカの足をこねくり回すこと数十回。
ふぅ、こんなものであろう。
同じ様に黄色い煎餅や串カツみたいなものが入っている容器も次々攻略。
「よくわからないけど全部猫のせいにできるんじゃね? 実際蓋を開けるの見たし」
「だな。ちょっとネコが触ったってのが気になるけど、さっさと頂いてずらかろうぜ!」
子供たちは我輩が弄くり回した商品を手に取ると、驚くべき速さでこの場から姿を消した。
おいおい、泥棒とは貴様等のことであろうが?
とはいえ、子供たちのしたことぐらいで目くじらを立てるのもアレだしな。
我輩のできることと言えば……証拠を隠滅するぐらいか。
仕方がないな、大人であるこのニャゴロー様が一肌脱いでやるとするか。
こうして先程床に落ちた蓋を咥えては容器の上へと戻し、同じように前足でくるくるーっとする我輩。
勿論回転方向は先程と真逆に。
ものの数分でミッションコンプリート!
まるで何事も無かったかのように元通り!
{ガタガタ……}
おぉっと!
孫娘が戻ってきおったな?
さっさと撤収だ!
「ふぅーってアレ? 子供等は帰ってったのかな? まぁいいや。さっきの続きでもしよーっと! 今度こそSRを……」
結局、普段から真剣に店番をしていない孫娘の目に店内の異変が映し出されることは無かった。
そしてこの数分後、先程の子供たちが親に連れられて坂の病院へと押し寄せたのであった。
原因不明の腹痛に襲われて……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます