第6話 庭師のニャゴロー
春近づくポカポカ陽気の今日、我輩はいつものように営業活動へと出発。
一番のお得意先であるゴミ虫バイク店へ。
おーお、今日もゴミ虫が汗か油か分からぬ汚い液体にまみれて仕事をしておるな。
吐き気がするわ!
それでも働く姿には尊敬の念を抱かざるをえまい。
昨今のニートとかいった〝食う寝るパソる〟だけのウンコ生産工場よりは幾分マシ。
なにもヤツの仕事が嫌いなのではないぞ。
他の人間が敬遠しがちな〝3K〟とも言われる職に就く人間はマジリスペクト!
その論理からいけばゴミ虫とて崇めなければならぬ存在となろうが、そうではないんだなーこれが。
生理的に好かんのだ!
ムカつくのだ!
虫唾が走るのだ!
ォェッとなるのだ!
要はゴミ虫自身が嫌いって事だな。
本来〝3k〟と言えば〝キチィちゃん、クチャラー、カマキリ先生〟だっけな?
※基本〝3k〟とは〝キツい、汚い、危険〟の頭文字をとったものだが、最近では〝厳しい、帰れない、給料が安い〟などといった様々なバリエーションがあるらしい
因みにヤツの場合、同じ〝3k〟でも〝臭い、クソ、殺してやろうか〟だがな。
いつか最後の項目を実行してやろうと思っておる。
さて話を戻すとするか。
先程も述べた様にゴミ虫はムカつくがその仕事ぶりは素晴らしい。
それは趣味における作業も同じ。
※バイク屋の主人は多趣味(プラモデル作り、アクアリウム、庭園造りや盆栽などの技術を要するものが多い)
そんなゴミ虫の目を盗み、我輩は軽やかな足取りで彼の本宅にある猫の額よりかは幾分大きな庭へ。
そこには素晴らしい光景が広がっていた。
おぉ!
見事な枯山水!
大小様々な石ッコロを用いての表現は最早芸術の域に達しておる!
そして所々に植えられた木々がアクセントとなりエクセレント&ワンダホー!
これだからゴミ虫は侮れない!
悔しいが仕事における情熱は我輩をも大幅に上回る!
だが、我輩とて仕事師のはしくれ、これ等の造形や芸術にも自信があるのだ!
そんなワケでひと手間与えてやるとするか。
そうすればこの作品も一段と評価が上がろうて。
― ニャゴローは水の流れを表現する砂利の美しいラインを崩さぬようそっと抜き足差し足猫足忍び足で中心にある巨大な石の上まで移動。その存在感は圧巻で、言うなればこの岩こそ庭園における最大の見せ所。そして…… ―
{プリリリリリリ……ぷうぅぅぅぅぅぅっ}
ふぅ、こんなもんか。
枯山水の目玉であろう岩の上へ我輩なりの枯山水を作ってやったわ!
コロッコロのウンチが砂利の代わりとなろうて!
ニャーッハッハッハ!
― ニャゴロ―は知らなかった。この時縁側奥にある座敷から一部始終をバイク屋主人が見ていたなどと…… ―
バイク屋の中庭にある枯山水風の庭園。
その中心にある岩の横に小高い砂利の丘が作られた。
まるで猫一匹を埋めたような大きさの山とまでは呼べない小高い丘が……。
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