第5話 清掃局員ニャゴロー
我輩の朝は早い。
別の言い方をすればこの職種がソレを要求する。
そう、その名もトレジャーハンタ―!
人間界は七日を一サイクルとしたチンプンカンプンな法則に従って生活をしている。
ムーン、ファイア、ウォータ、ウゥッド、マネー、ソイル、そしてサン。
その中でソイルとサンは主に休息日としているようなのだ。
だが今回はそんな話ではない。
地域にもよるが、ムーンからマネーの何れかに大量のエルドラドが出現するのだ!
我輩の寄生する三河家がある地域ではズバリムーンとウッドがソレに該当する。
大概は各々の住処前に出現するのだが、この辺りはゴミ虫宅前にある電柱横が鉱脈となる。
そう、袋に入った大量の食糧や趣味の道具類からなる宝の山が現れるのだ!
以前は取り放題のパーティ三昧であったが、最近はそれも難しい。
なぜか変な網が被せられているのだから。
これはきっとレイブンス対策であろう。
なにせヤツラはしっちゃかめっちゃかにしていくからな。
そのせいで我等猫族は大迷惑を被っておるのだ。
我輩達はほんの少し袋を破って中身を引きずり出しているだけだし。
それでその周りをドロッドロのグッチョグチョにしているだけだしぃ。
ヤツラみたいにクチバシでつついて小さな穴を開けまくっているワケではないしぃ。
まったく、本当にレイブンのヤツラは困りものなのだ。
我輩の目ヤニでも煎じて飲ましてやりたいぐらいだな。
そして今日はム―ン。
そう、エルドラド出現日なのだ。
しかも早くしなければかの山は忽然と姿を消す。
急がなければ!
小走りで家を出ると直ぐに山が出現、そこには既に数匹の猫がたかっていた。
ニャー吉達だ。
ニャン吉やニャン太郎などの同業他社までもが既に群がっておる!
えぇぃ出遅れたわっ!
彼等は袋の中に全身を入れて宝を漁っている!
その姿には鬼気迫るものが!
これには我輩もチョードン引き!
傍から見ると我輩もあんな風に見えるのだな。
ちょっと醜いかも。
しばし反省を促していたその時!
エルドラド前に一台のトラックが停車した!
{ウォンウォンゥォン! ガガガガガ! ガッシャンガッシャン!}
「ニギャアァァァァァァァァァァッ!」
「グニャァァァァァァァァァァァッ!」
「ブニャアァァァァァァァァァァッ!」
サラウンドとなって聞こえる断末魔にも似た猫の鳴き声!
一体全体何が起きた!?
「オッケー! 次行こうかーっ!」
{バタン! ブゥン、ブロロロロロロロ……}
トラックが去ると、エルドラドは跡形も無く消えうせていた。
その場にはまるで血溜まりのような真っ赤な水たまりを残して。
あれは一体……。
それにしてもニャン吉達は何処へ?
臆病者の彼等のことだ、きっとトラックに驚いて早々尻尾を巻き逃げたのであろうな。
……逃げて行ったと思う。
……たぶん逃げおおせたかと。
……ま、いっか!
こうして悪運強いニャゴローは事なきを得たのであった。
※月木は可燃ゴミの日
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