夏
第4話 夏の日
瑠果くんからのメッセージが来なくなって、もう一ヶ月くらいになる。少しだけ心配になってきた。
絶対に……最悪な予感をぬぐえなくなってきたし。
七月、暑くなってきた。去年のわたしはまだ学校に行くことができてなくて、ちょうどいま頃から熱海のおばあちゃん家に来てたんだっけ?
「ん? 瑠果くんから、来た!」
「え? ほんとに?」
学生寮のルームメイトの城山詩音ちゃんと一緒に、そのメッセージを見た。
『今度の土曜、来れる? 話があるんだけど』
熱海駅……わたしは少しだけ緊張していた。
真っ白なワンピースを着て、編み込みのハーフアップにしたけど、少しだけ不安になった。まだ瑠果くんからの話を聞いてなかったし。
「夏海。」
駅の改札口に瑠果くんが来た。
白のTシャツをジーンズなのに、大人っぽく見える。
「瑠果くん、久しぶり。元気そうだね?」
「夏海は小さくなった? なんかこの前、会ったときより縮んだように見える。」
「瑠果くんが背が伸びたからでしょ!!」
全然伸びなくなってんだよね……背が。まだ160センチにもなってないし。
それに比べて、瑠果くんはぐんぐん背が伸びてるのか、この前よりも高くなっていた。
瑠果くんと手を繋ぐことになった。
「海が丘学院、どう?」
「え? 楽しいよ。夏休みが終わったら、内部進学のテストがあるから、少し勉強をがんばらないといけなくて……少しだけ数学が不安すぎて。」
瑠果くんはとても安心したのか、ホッとしてる表情をしている。
「夏海。話があるってこの前、LINEで送ったけどさ。」
おばあちゃん家に着いたときに、縁側で話していく。
わたしは瑠果くんの隣で、話を聞くことにした。
ドキドキとしてきた。
「俺、今度、イタリアに一時帰国する。」
「えっ、そんな……まだ早いよね?」
「うん……。母方の叔父さんの葬儀に出ないといけなくて。」
「うん。瑠果くん、イタリアのおみやげ、買ってきて。」
「あ、誕生日プレゼントだよな。」
瑠果くんが笑いながら、わたしの話を聞いてくれた。
「内部進学、わたしは絶対に受からなきゃいけなくて。」
「うん。」
「プレッシャーがすごくて……めちゃくちゃつらいの。瑠果くん?」
瑠果くんはそっと抱きしめてくれる。
緊張してしまう。
心が温まる。
とても帰ってほしくない。
瑠果くんが遠くに行ってしまう……そう思うと、とてもつらい。
いつの間にか、瑠果くんの隣で寝てしまったようで……わたしは目を覚ましたときに、瑠果くんが使ってる離れにいた。
「目、覚めた? 俺が連れてきて正解だったなーて。」
「あ、ありがとう! イタリアにいつ帰るの?」
「明日の朝の便で行くから、しばらく会えないから、ごめんな。夏海。」
「いいの。安心できたかも、瑠果くんはそっとしてくれるから。」
瑠果くんがいきなり抱きしめてきた。びっくりしたけど、かなり不安だったのがだんだんと弱くなってくる。
そっと唇が重なって、わたしは泊まる部屋に戻った。
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