第2話 遠く

 詩音ちゃんがなかなか立ち直れずにいる。

 それを励まそうとするけど、どう言えばいいのかわからなかった。

 それから、今学期のうちには進路指導があって、進路を本格的に決定し出す。

「瑠果くん、どうしてるのかな?」

 わたしはベッドで瑠果くんから、メッセージが来てたのを思い出した。

『夏海は進路、どうした? 内部進学で行くのか?』

 やっぱり、向こうも進路についての相談だった。

『うん。その予定だし、そのまま寮生活するのは良いしね!』

『俺の場合は…イタリアに帰国することが前提で、また連絡が来てるんだよな。あと父さんが帰国しろってうるさくて』

 そのメッセージを見てから、スマホの電源を切った。

 瑠果くんと遠く離れてしまう。

 かなり遠くなるのかもしれない。

 イタリアと日本はとても離れてて、しかも往復するのにも旅費がかかるんだよね。

 ふと詩音ちゃんのことが気になり、わたしは声をかけたの。

「詩音ちゃん、明日の体力測定さ、シャトルランと握力を計るんだって。きつくない?」

「そうだね。うじうじしてる場合じゃないよね、夏海。明日からいつも通り過ごすよ。ありがとう」

 詩音ちゃんはいつもの明るい笑顔を見せてくれた。それを見て安心できた。

 翌日にあったシャトルランと握力では、詩音ちゃんがダントツでクラストップの記録を出した。

 吹っ切れたみたいで、よかったなって思った。





 そして進路については、とにかく内部進学のテストにパスしないといけなくて、結構焦ってくる。

 この前の返ってきた模試の結果も、全然大丈夫ではなかった。

 うちの学校は夏休みが明けてすぐに内部進学の生徒は、内部進学のテストをすることになってて、パスしない限りは外部進学することになる。



 音楽部での演奏は、すぐに定期演奏会の練習を始めていたの。

「アルトサックスのパートは大丈夫? 夏海ちゃん、すぐに音取りに入ってもらえるかな?」

「うん。いいよ。すぐになんとかできそう、やってみるよ」

 有名なボーカリストの曲で、たまにテレビに出演しているのを見たことがある。

 わたしはすぐに音程を合わせて、練習を始めた。

 紗良ちゃんのバイオリンが加わって、他の子の音色も加わっていく。一つの輪のようになっていく。それがとても良い。

 詩音ちゃんはフラれたことを吹っ切れたらしく、柔道部の女子主将でがんばっているのを見て、ホッとした。


 もうすぐゴールデンウィークがやって来る。

 来週からは東京の実家に帰る予定だ。

 瑠果くんとはあれから、連絡が来てなかった。向こうも忙しいはず。

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