第24話 疑い
「作戦は急遽正午にスタートする。」
リーパーはライナーらにそう告げた―――――。
―――6時間前。
リーパーはプライスに呼び出されて、プラントの未開発区画に来ていた。
未開発区画はまだ開発が進んでおらず、プラントがまだ建設途中の鉄骨の部分しか出来上がっていない状況のプラントだった。そんなプラントの夜空には邪魔をする物は無く、星が綺麗に輝いていた。
「プライス。いきなり俺を呼び出して。寝ていたのだが。」
寝ていた所を起こされたリーパーは何だか不機嫌だった。しかし、プライスはそんな事は構わなかった。
「リーパー。お前に重要な事を話さなくてはいけない。」
「何だ。」
「MI6で有名な映画を知っているか。」
「あぁ、もちろん。007だろ。MI6が諜報機関なくらい知ってる。バカにするな。」
「バカにはしていない。そして、MI6の経歴でいえば公開されていないロシアの神経毒―――ノヴィチョクまでも知っていた。これから分かる事は。」
「ヤツらの諜報能力をあなどるな――、か。」
「そうだ。そして、ここからが最も重要な事だ。良いか?お前だから話す。」
「あぁ。」
そして沈黙が訪れる。冷たい海風はリーパーとプライスに吹き付ける。
「―――IRAの中にスパイがいる。」
「!?」
リーパーは驚いた。イギリスは自国のテロ攻撃を行っているIRAにスパイを送り込んできたのだ。
「な、なぜそれが分かった!」
「前、俺達がイギリスのロンドン警視庁―――スコットランドヤードを奇襲した時に連中に待ち伏せされてたんだ。だから、恐らく今回の作戦も漏れてる。」
リーパーは頭を抱える。完璧なはずの作戦に急遽、穴が開いたのだから。
「リーパー。この作戦の指揮権はお前にある。作戦は3日後。全てはお前が決めるんだ。」
プライスはリーパーに迫る。
「そして、俺が敵かもしれない事を頭から離すなよ。慎重にいけ。」
そして、自分のスパイの可能性があることも示唆した。
―――クソ!完璧なはずの作戦が。どうする、どうするリーパー、、、。
リーパーは未開発区画を歩き始めた。プライスもそれを追う。
―――今から犯人を探すのは遅すぎる。だからと言って作戦を中止する訳にもいかない。対英戦争へのスケジュールが狂ってしまう。
リーパーはルーンから送られてきたペンツァーファウストをポーチから取り出す。
―――あぁ、こんな時、ナチならどうしただろうか。
リーパーは対英のプロ、ナチの作戦を頭の中から漁る。
―――ナチ、ヒトラー総統閣下、パリ入城、独仏休戦協定、列車、時刻表―――ヒトラー総統閣下は気分次第で行先を変えたから暗殺出来なかったんだよな。いや、気分次第で変える。そして、イギリスはそれで暗殺出来なかった!
「分かったぞ!」
リーパーはいきなり思いついたように声を上げる。
「おっ、何か良い案でも浮かんだかな。」
「あぁ、作戦の結構時間を大幅にずらす。そして、結構時間がバレている事を逆手に取って奇襲するんだ。」
「ソイツぁ、良い案だな。俺も良いと思う。」
「だろ。皆へは朝一番に通達する。」
「そうか。じゃあ、俺はもう寝る。」
そう言って一件が片付いた為、プライスは自室に帰った。
「そうだな。俺も寝よう。」
リーパーも自分の寝床に向かった。
「作戦は急遽正午にスタートする。」
リーパーはライナーらにそう告げた。
「おい!一体どういう事だ!ふざけるのもいい加減にし、、、」
ライナーはリーパーに反発したが、マイケルに抑えられて収まった。そして、マイケルがリーパーに問う。
「どうして急遽大幅な作戦の時間変更をしたんだい?」
「それはだな、この中に卑劣なMI6スパイが居るからだ。」
皆は驚いた様な顔をした。
「我々ストライク・ブラックの人間以外、IRAのどこかにスパイが居る。」
「で、でもぉ、皆こうやって上手くんだし~、スパイ何か居ないんじゃないですか~?」
シェラはリーパーの『スパイが居る』という考え方そのものを否定した。
「いや、スパイは必ず居る。」
「じゃあ、その根拠は何なんだよ!!」
ライナーはリーパーの胸倉を掴んだ。すると、プライスはM1911A1ガバメントをライナーの頭に向けた。
「スコットランドヤードをヤった時に待ち伏せされてたろ?そして、最近のIRAの作戦は全て失敗している。あれは作戦が漏れてるからだ。そして、俺はお前が嫌いだ。お前の様な騒いでいるだけで使えないゴミはここで排除しても構わない。」
ライナーはリーパーの胸倉を離した。
「プライス、止めてくれないか?」
「そうだよ!味方同士での殺し合いなんて無意味だよ?」
マイケルとシェラはプライスを止めた。プライスは銃をホルスターに戻す。
「何はともあれ作戦はもう直ぐ始める。分かったらさっさと準備をしろ。」
そう言い残して部屋を出て行った。
「おい、ここにスパイが居るって本当か?」
シャドウがリーパーに問う。シャドウにはバラライカも付いてきていた。
「あぁ、MI6の事だ。必ず居るだろう。」
「でも、それって誰が言ったのよ?」
「俺とよく似た変人だ。」
「「?」」
シャドウとバラライカは頭を傾けた。
「あぁ、そう。バラライカはコリブリと俺達を迎えに来てくれ。」
「え?でも、回収するヘリはシェラちゃんが、、、。」
「残念ながらIRAの連中を今は信用出来ない。まぁ、保険ってところだ。何も無いのを期待するだけ。俺達は信用出来るからな。あと、この件は極秘でな。」
「そう、、、。」
バラライカは少し暗そうに答えた。
「何だか不満そうな顔だがどうした?」
「、、、何でも無い。」
―――あ、そうか。コイツはシャドウと一緒に行動する予定だったから不満があるのも当然なのだろうか。いや、戦場にそのような感情を持ち込むのは厳禁だ。俺は間違ってはいない。そう、俺は正しいのだ。
「早く支度を済ませろ。」
そう言い残してリーパーはコリブリの元へ向かった。
リーパーはコリブリのヴェノムをノックした。
「どうしたんですか?リーパー。」
「作戦は今日になった。」
「それは、また急な変更で、、。」
コリブリは苦笑いをする。
「そこで、お前に頼みがあるのだが。」
「えぇ、出来る事なら何でも。」
「実は、この組織にはスパイが居る。だから、俺達を回収するヘリがスパイの手に渡ったら脱出出来なくなる。そこで、お前を保険として使う。良いか?」
「それは大変だ。分かりました。」
「それで、俺がウクライナで助けた女がいるだろ?」
「あぁ、バラライカ?とかいう女ですか?」
「あぁ、そいつだ。そいつをここに配備する。バラライカと回収に来てくれないか?」
「えぇ、それは構いませんが、、、。」
「バラライカは少し扱いが大変だからまぁ、頑張ってくれ。」
「一体どんな女なんですか!?」
コリブリは顔を青くする。
「あぁ、あと1つだけ。この件は極秘で頼む。」
「ラジャー!」
そう言ってリーパーは皆の元へ戻った。
「作戦準備は整ったな?」
リーパーの前には作戦準備を終えた皆が集合していた。
リーパーはいつも通りG18Cを2つに拡張マガジンを付けてカスタムを施した装備。トレードマークのインターフェースもしている。
次にシャドウ。シャドウは背中に長い刀を装備している。彼の戦闘スタイルは主に近接戦闘。その刀で大勢の敵を一刀両断する。また、とても鋭く丈夫な為、ボディーアーマーおも斬る事が出来る。そして、サブウェポンにはトカレフ拳銃を持っている。トカレフは安全装置が無い為、直ぐに撃つ事が出来るが安全面は乏しい。
そして、ライナー。ライナーはコピー製品のAK-47を装備している。しかし、威力は変わらない。
その他の皆はM16を装備。マイケルのM16にはグレネードランチャーが装備してあり、シェラの物にはスコープが付いていた。
「そして、急なお知らせだ。バラライカは万が一に備えて基地で待機だ。皆、問題無いな。」
「あぁ、こんなのお前達が居なくても楽勝だぜ!」
ライナーは相変わらずのツンデレをかましていて、皆は苦笑いだ。
「やっぱり今からでも中止した方が良いよ!準備も万全じゃ無いし、、、。」
シェラはこの作戦に反対している。
「この作戦はもう既にMI6にバレている。だから向こうが対策をしているうちに決行する。後退りはもう出来ない。さぁ、イギリスの豚共に鉛弾を喰らわせてやれ!!」
リーパーはシェラの言う事を耳に入れなかった。
「「じゃがいもの時の恨み、ここで晴らしてやる!!」」
部隊の皆も闘争心を露わにしてきた。
「さぁ、まずはいきなり訪問だ。」
そう言ってバラライカ以外の一同はUH-60ブラックホークに搭乗し、イギリス本土にあるMI6本部を目指した。
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