第25話 SIS本部、襲撃作戦
彼らを乗せたブラックホークは、ストライク・ブラックが開発したコード偽装技術などの偽装技術により、MI6本部のSIS本部の上空に到着した。
「今からSIS本部ビルを襲撃する。ストライク・ブラック万歳。」
リーパーはG18Cのスライドを引く。その中ではフルメタル・ジャケットの9×19mmパラベラムが発射可能になる。
「現時刻より反逆を開始する。アイルランドの平和とイギリスへの復讐は俺達が果たす。正義の裁きの元、俺達のフルメタル・ジャケットで英国の豚共に苦痛を与えてやれ。左手に投票箱を、右手にアーマライトを!」
『ウオォ―――!!』
ライナーの後に続いて皆は雄叫びを上げる。その雄叫びは曇っているイギリスの空の下で響き渡る。
「ラぺリングで降りるぞ。ビビッてちびらない様にな。」
そう言ってリーパーは地上にロープを垂らしてそのロープを伝い、イギリスの地面に降り立とうとした。その次にシャドウも降りていく。
「じゃあ、俺達は上からだ。シェラは残ってろ。」
ライナーはそう言うとSIS本部ビルの上に降りた
「アイアイサー!」
シェラは部隊の皆が降りていくのをヘリの上から見送った。
リーパーとシャドウは堂々と正面玄関から入っていった。
「さぁ、パーティーを始めようぜ。」
リーパーは銃を握ろうとしたが、
「久しぶりの任務なんだ。俺に斬らせてくれよ。」
シャドウがリーパーの手を止めた。
「別に良いが、カッコいいトコ見せてもバラライカは見ていないぞ?」
「うるせぇ!お前も一緒に斬ってやろうか!?」
シャドウはリーパーに中指を立てて怒鳴った。
「おぉ、怖ぇ。」
「じゃあ黙って見てろってんだ!」
そう言うとシャドウはいきなり鞘から刀を引き抜くと、大勢のSIS職員に斬りかかった。
「うぁぁぁぁああ!!」
「た、助けてくれあぁぁぁぁぁ!!」
「わ、私は関係無いから助け、、、、あぁ、、、、。」
生暖かい鮮血が空中を舞う。そのうち叫び声は聞こえなくなった。シャドウは誰1人逃さないでロビーの受付嬢までもを残さず斬った。しかし、緊急用のサイレンが本部ビル内に響き渡った。
「お前控えめになったのか。前は笑いながらぶっ殺してたのに何今更クールに人殺してんだよ。」
以前のシャドウとは様子が違うのをリーパーはすぐに見抜いた。
「う、うるせぇ!お前もぶっ殺すぞ!」
シャドウはリーパーに刀の先を向ける。
「俺を殺す前にアレを殺してくれ。」
リーパーはこちらに銃を向けている特殊部隊に指をさす。
「お前も殺るか?」
シャドウはリーパーに問う。
「お前が全部狩るってんなら手は出さない。」
リーパーは快くシャドウに譲った。
「じゃ、お言葉に甘えて全部殺っちゃいましょう!」
シャドウは自分のポーチから拳銃型の注射器を取り出してから何か液体の入っている小さな試験管をセットし、鋭利な注射器の針の保護キャップを外すと自分の首筋に刺した。
「それじゃ、始めるか。」
そう言うとシャドウは注射器のトリガーを引いて自分にそれを注射した。
「ハァ――――――ッ!!」
シャドウの心臓は大きく鼓動して、彼の身体に大きな衝撃が走る。
「行って来い。モテ男さんよ。」
リーパーはそう言ったがシャドウには聞こえなかった。
そして、シャドウは持っている刀を敵部隊に向け、目にも止まらぬ速さで突撃していった。
「う、撃てぇ!撃てぇ!」
敵部隊はシャドウに発砲を開始――――、したが、間に合わなかった。
銃から銃弾が出る前に自分達の身体から血が噴き出る。その血は冷たい空中に舞う。生暖かい血は地面に落ちる前に冷めてしまうのだ。
兵士は自分の身に何があったか分からないまま死んでいくだろう。上半身と下半身を真っ二つにされた兵士、頭を斬られた兵士、臓器を引きずり出された兵士―――、
でも、このような残酷な殺し方の方が人道的だ。何故か。それは本人達が苦しまずに死んでいくから。しかも、本人達はシャドウが刀を振るスピードの速さが銃弾より速い為、痛みなど感じないのだ。
「終わったな。」
リーパーはただただシャドウが戦っているのを見ているだけだった。正直、リーパーは正確にシャドウの動きを捉えていた訳では無い。速過ぎるが故、全ての動きを捉える事など不可能に近いのだ。しかし、兵士がバタバタと倒れていくのは見えた。
全ての兵士が倒れた事を確認出来たから終わった――、そう思ったのだろう。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、、、、。」
シャドウは突然、その場に倒れた。薬の効果が切れたのだろう。
「おぉ、大丈夫か。」
リーパーはシャドウに近づく。
「だ、大丈夫っ、、、問題無い、、ハァ、、。」
シャドウの息は上がっていた。
「落ち着いて思いきり深呼吸をしろ。」
リーパーはシャドウにそう言う。シャドウは言われた通りに落ち着いて深呼吸をした。すると、顔色が良くなっていく。
「お前にはあまりこの薬は合わないみたいだな。」
リーパーはシャドウのポーチからシャドウが自分に注射した薬を取り出す。
「ハハッ、、、そうなのかもな、、、、。」
リーパーが今持っているのはCAM戦力増強剤。ストライク・ブラックが開発した、兵士支援用の薬品だ。リーパーも何度か使用した事があり、最近ではウクライナで使用した。CAMは『コンバット・アシスト・メディスン』の略である。この薬は、兵士のシナプスの伝達速度を最大限に引き出させて超人的な力を得る事が出来る物だ。簡単に言うと極限の集中に加えて物凄く早く体に「動け」と命令出来るのだ。だから極限の集中状態にいたシャドウは1秒を10秒以上に感じて、その中でも体の神経伝達が高速な為、自由に動き回る事が出来たのだ。しかし、そんな薬でも、適合しなければ使用後の疲労は大きい。最悪死に至ってしまう。
「俺はこれを使うとメチャクチャ眠くなるだけだ。」
「そんなんで良いな。俺なんかこの様だ。」
シャドウは自力で起き上がった。しかし、彼はクタクタだった。
「休んでいる暇は無い。増援が来てしまったら終わりだ。」
「あぁ、その通りだ。分かってるじゃないか。シャドウ。」
リーパーはそう言うと薬をシャドウに返した。
「お前はもうこれを使わない方が良い。」
リーパーはシャドウにそう告げる。
「でも、それじゃあどうやって戦えば良いんだよ!」
シャドウはリーパーに詰め寄る。
「お前はいつか戦いを手放す時が来るだろう。戦いを捨てた後に支障が出たらどうするんだ。第一、お前は最近誰かに好意を抱いているだろう。」
シャドウはリーパーにそう言われると少し固まった。何か思い当たる事があるのだろう。
「俺は、、、誰かに好意など抱いた事は無い、、。」
「それを否定しているんじゃない。誰かを好きになる事は素晴らしい事だと俺は思う。しかし、その薬を使い続けてお前を失った人間はさぞ悲しむだろう。」
「そんな事言って、、、お前は俺をおちょくってるのか!?」
「おちょくってなどいない。俺はただ、お前が戦いで人生を棒に振る必要は無いと言って居るんだ。」
「どういう事だよ!?」
シャドウはリーパーの襟を力強く掴んだ。
「俺の様になるな。簡単に言うとそうだ。」
リーパーはシャドウにそう言う。するとシャドウはリーパーを離した。
「お前は俺とは違う。人を愛し、愛す事が出来るはずだ。俺はそんな事よりも大切な事がある。でも、それは全てを捨てなくてはいけない。お前はもう手放せない物を持っているはずだ。だから、自分の幸せを考えたらどうなんだ。」
「、、、。」
シャドウはただ、下を向いて黙っているだけだ。そして何故か、心拍数が上昇している。
「少しくらい素直になったらどうなんだ?黙っていたって分からない。だから口があるんじゃないか?」
そう言い残してリーパーは施設の奥へと進んでいった。シャドウはしばらく血だらけのロビーで止まったままだった。
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