第23話 プレゼント

 次の日。リーパーはプラントに着いたナチスのオスプレイの前にいた。

 ネオナチのオスプレイは灰色のカラーリングが施されており、機体の縁には白いラインが描かれていた。そして大きく描かれた鉄十字もナチ至上主義者にとっては魅力的だ。

「ストライク・ブラックのリーパーさん!いらっしゃいますか?」

「あぁ、ハイル・ヒトラー。」

 リーパーはナチスの兵士に呼び出された。そして、ナチの前へ行く。

「要件は?」

「総統代理閣下からの物資です。」

 そう言って、オスプレイの中から大きな箱をズルズルと持ってきた。

「大変だな。」

「えぇ、とても重いです。」

「そんで、中身は?」

「分かりません。中身は極秘だと総統代理閣下がおっしゃっていましたので、、、。」

 やっと外に大荷物を出したネオナチの兵士は、もうクタクタだった。

「ご苦労。総統代理閣下によろしく伝えておいてくれ。ハイル・ヒトラー。」

 そう言ってリーパーは大きな荷物を引きずっていった。


「なかなか重そうじゃないか。リーパー。」

 リーパーが荷物を引きずっていると、寝起きのプライスに会った。

「なかなかじゃなくてメチャクチャ重いぞ。コレ。」

「そうか。」

「そうかじゃ無い。手伝え。」

「嫌だ。重そうだし疲れるし。」

「中身分けるから。」

「はぁ、、。分かった分かった。」

 嫌そうな顔を見せてプライスはリーパーの荷物をリーパーと一緒に持つ。

「うわっ、重っ。」

「だから言ってんだろ。重いって。」

 そんなくだらないやり取りを経て、何とか部隊の部屋へ運んできたリーパーとプライスは、ナイフで慎重に箱を開ける。

「良いか、いくぞ。」

「あぁ、やれ。」

 そう言ってリーパーは箱を勢いよく開けた。その中には―――、

「何だコレは!!」

 大量のカロリーメイトが入っていた。

「いや、カロリーメイトだけでこんなに重くなるのはおかしい。きっと、まだあるはずだ。」

 プライスは箱にギッシリ入っているカロリーメイトをかき分ける。すると―――、

 中にはペン数本と黄金に輝いたルガーP08。そして―――、

「コイツぁ、驚きだな、、、。」

 中にガスマスクらしき物と組み上がっていない装甲アーマー。そして、改装された重機関銃MG42と大量の7.62mm×31NATO弾が入っていた。

「コイツを組み立てるぞ。工具を持って来い。」

「もうここにある。」

 プライスは工具箱をリーパーに渡す。そして、リーパーは付属していた説明書を読み、組み立てていく。


――――1時間後。

「これは『アサルト・ギア』。ナチスが開発した敵陣強襲用短期決戦兵装。身体能力の補助機能に加え、防弾、防火、防爆、防毒、など、様々な攻撃から身を守る事が可能な装備、、、。」

「これ1つでざっと中隊並みの兵力があるな。」

「コイツぁ、スゲェ。スゲェけど、、、。」

 リーパーは息を大きく吸った。

「どう見ても隠密任務には向かねぇ兵器だな!!」

 そう叫んだ。

「何で隠密任務なのにコレなの!?自分でも『スパイごっこ』って言って無かったっけ!?スパイってこんなの着て戦うの!?おかしいでしょ!?」

「ナチスも困ったモンだな。」

 さすがのプライス先輩も苦笑いだ。しかし、さっき投げ捨てたペンの様な物にプライス目を付けた。

「何だこれは。」

 そんなペンを手に取る。見た感じは何の変哲も無いペンだ。しかし、プライスはクリップの様な物に違和感を感じた。そして、そのクリップを押す。すると、

『ドン!!』

 そのペンから何かが発射され、爆発した。部屋は吹き飛んでしまった。

「クソ!!何てモン送り付けてきやがった!!ヒトラー総統閣下でもこんな事はしないぞ!!」

 プライスとリーパーは爆風で壁に打ち付けられた。しかし、アサルト・ギアは傷1つ付かずにピカピカだった。

「おい!大丈夫か!?」

 驚いた顔でシャドウとバラライカを始め、たくさんの基地のIRA兵士がやって来た。

「クソォ!!ナチスの連中が『ペン型パンツァーファウスト』を送り付けてきやがった!!」

 リーパーは中指を立てながら起き上がった。

「でも、コイツぁ良い。驚きのスパイ道具だ。」

 吹き飛ばされたはずのプライスは、この『ペン型パンツァーファウスト』を気に入った。

 そもそもパンツァーファウストとは、ドイツ軍が第二次世界大戦時中に開発した歩兵携帯用の対戦車兵器である。棒の先に弾頭が付いているだけのシンプルな構造で、多くの兵士に支給された。そんなパンツァーファウストをナチスが小型化、そしてペンにカモフラージュした物がこの『ペン型パンツァーファウスト』だ。

 対戦車兵器ほど威力は無いものの、これ1つで車なら吹き飛ばせるだろう。

「これは良い、、。『ツァーファウスト』と呼ぼう。」

 プライスは発射し終わったペンツァーファウストの棒の部分を持って自分のポケットにしまった。



「本当に驚いた。まさか、こんなペンが爆発物だとは思わなかったよ。」

 マイケルはプライスから借りたまだ発射していないペンツァーファウストを受け取ってまじまじと見ている。

「おい、あんまそれ弄らない方が良いんじゃないか?」

 何とか一命を取り留めたリーパーは、黄金のルガーをガチャガチャ弄りながらマイケルとプライスに警告した。すると、端末に着信が入る。リーパーは代理の部隊の部屋から出て行って応答する。

「こちらリーパー。」

『ジーク・ハイルだ!リーパー!』

 着信の相手はルーンだった。

「総統代理閣下、、、。」

『ハハハ!!プレゼントは楽しんでくれたかな?』

「どこが楽しんでくれたかな?だ!!こっちはあんたの送ってきた爆発物で吹き飛ばされたんだぞ!!せめて説明書か警告くらい書いとけアホ!!現在のドイツ陸軍と一緒だな!!ナチの恥さらし!!ポンコツ!!バカ野郎!!クソビッチ!!ソ連軍に蹂躙されてろ!!ペチャパイ!!」

『うぅ、、、。グズン、、、グズン、、、。』

「おい!どうしたんだよ!!ペチャパイ!!」

『そんな、、、うぅ、、、そんな言い方無いだろう、、、グズン、、、ふ、、ふぇ、、そ、、それに、、、私は最近、、、うぅ、、、胸が小さい事も、、、うぅ、、気にしてるんだぞ!!、、、グズン、、、』

 どうやらルーンは向こうで少し泣いているらしい。

『お前に喜んでもらおうと思って、、、うぅ、、自分で梱包したのにぃ、、。グズン、、、』

「すいません代理閣下。俺も言い過ぎましたよ。だから、泣かないでくださいってば。」

 さすがにリーパーも言い過ぎたと反省をしている。

『アサルト・ギアは重かったのにぃ、、、うぅ、、、』

「分かりましたから。それで、何をすれば許してくれますか。」

『それじゃあ、超絶イケメンを私に貢ぎたま、、、。』

―――ブツッ!

 リーパーは親指に力を込めて通信を切った。

「俺はバカだ。代理閣下を調子に乗らせなければ良かった。」

 そう言ってポーチに端末をしまった。


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