第9話 戦うワケ

―――――俺は、、、、ここは、、、、。一体、、、。

 リーパーは暖かな光に包まれる。そしてリーパーの目の前で倒れている誰かがいた。頭に銃口を突き付けている。近づいてみると、、、

―――――何で俺が頭に銃口を突き付けているんだ!?

「おい!止すんだ!」

 リーパーは目の前で倒れている自分を止める。

「俺は、、、頑張ったんだ、、、でも俺は、、、何をやっても、、、ダメだった、、、。だから、、、もう、、、疲れた、、、。すまないな、、、、。何も残せなくて、、、。でも、、、俺は、、、死ぬことで、、、自由になれるんだ。」

「よせぇぇぇぇえええ!!」

 リーパーの目の前のリーパーは、銃に掛けた人差し指を引いた。リーパーの声は届かなかったのだ。

 すると、自分の頭にも激痛が走る。

「うぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ハッ!」

 そこはヴェノムの中だった。自分は長い間寝ていたようだ。

「ちょっと!どんだけ寝てるのよ!」

 リーパーは頭を何かで叩かれた衝撃で起きた。そして自分の上に何か重い物を感じた。

「うぅ、、、。重たい、、、。」

「誰が重いですってぇぇええ!」

 上に乗っていたのはバラライカだった。そしてバラライカはクリンコフのストックでリーパーの頭を叩く。リーパーの頭に激痛が走る。

「痛ってぇぇぇええ!!」

 リーパーはバラライカの胸倉を掴みかかる。

「良いか!お前を助けたのは誰だ?俺だ!お前は命を助けて貰った恩を仇で返してるんだぞ!」

「うるさい!あんたが重いって言ったからでしょ!?」

「起こした時にもストックで叩いただろ!!」

「それはあんたが起きないから悪い!」

「今日は休みなんだよ!!兵士にも休日はあんだよ!」

 朝からリーパーとバラライカは言い争いをしている。

「朝からうるさいですよ、、、。夫婦漫才はよそでしてください。」

 コリブリはリーパーにドイツ語で苦情を言う。 

「こいつ、何て言ってる、、」

「あぁ?ぶっ殺すぞ!!」

 バラライカには通じなかったようだが、リーパーには通じたようだ。リーパーはドイツ語を知っている模様。

「ねぇ、こいつ何て言ってたの?」

「あぁ、うるさいって。」

「チッ、うるせぇパイロットだ。」

「どーも。」

 バラライカはヴェノムから降りた。リーパーは広くなった機内でインターフェースの通知を確認する。


【重要なお知らせ】

 ウクライナ東部への増援部隊はウクライナ遠征部隊の輸送中の物資、装備が敵対組織に襲撃された為、延期。


「はぁ!?何やってんだよ!!」

 リーパーは残念な知らせを知り、中指を立てる。

「ファッキン!マジでファッキン!」

 リーパーは表現しやすい一応母国語の日本語(?)で暴言を吐く。

「何語だろうと暴言を吐いている事は分かりますよ、、、。」

「くぇrちゅいおぱsdfghjklzxcvbんm!?」

「もう言語ですら無いです、、、。」

 リーパーの怒りは言語おも超越した。そしてリーパーはヴェノムのハッチを開ける。

「どちらへ?」

「昼寝だ。」

 リーパーはいつものベンチへ向かった。ムカついたらすぐに寝る。それがリーパーのストレス解消法だった。


 リーパーは鉄条網の近くのベンチに着く。しかし、そこには先客のバラライカが座って本を読んでいた。

「どけ。俺はここで寝る。」

「何でよ!私が先に来てたのよ!」

 もちろん怒られる。

「まぁ良い。そこ座るぞ。」

 勝手にバラライカの横に座る。

「わぁ、、ちょっと!何で座るのよっ!?」

「あ?空いてるからに決まってんだろ。クソアマ。」

 リーパーはバラライカに中指を立てる。最近リーパーのマイブームは中指を立てる事なのだろうか?

「誰がクソアマですって!」

「はるはった、はるはった、、、。(悪かった、悪かった、、、。)」

 リーパーの黒いマスクと一緒に下のほっぺたもぐにーと引っ張る。しかし、マスクのせいかあまり伸びなかった。

「それより、そんなの外しなさいよ。」

「嫌だね。」

「うるさい!じゃあ勝手に外す!」

「おい!乱暴にするんじゃない!」

 バラライカはリーパーのVRのようなインターフェースを強引に外す。リーパーは抵抗するが、バラライカのとてつもない力に負けてしまった。

「あんたの瞳って、、、、。冷たいね、、、。」

「人のインターフェースを取っておいて何言ってんだよ、、、。」

 リーパーは視線を逸らす。

「そのマスクも取って良い、、?」

「どうしてだ。」

「あんたの顔を、、、、見たい、、、。」

「はぁー。分かった、分かった。」

 リーパーは抵抗を止めて両手をブラーンとさせた。すると、バラライカの白くて細い腕がリーパーの顔に近づいてきて、綺麗な両手で黒いマスクを外す。

「あんたの割には意外と顔が整ってるじゃない、、、。」

「うるせぇ、、、。」

 リーパーとバラライカは目と目が一瞬だけ合ってしまった。ほんの一瞬だけ、、、。バラライカは慌てて視線を逸らす。リーパーは不思議そうに首を傾げる。

「何故視線を逸らした?」

「うるさい!ちょっと黙って!!」

「はいはい。」

 リーパーは言われた通り黙る。

「ねぇ、あんたって今何歳なの?」

 沈黙を破ったのはバラライカだった。

「今は16だ。」

「あら偶然ね。私も16なの。」

 バラライカはリーパーと同い年だった。

「あんたは何で戦場に?」

「俺が戦場にいる理由か、、、。それは、俺の『居場所』だからかな。」

「あんたの、、、『居場所』?」

「あぁ、俺の居場所。もうこの世には居ない俺の師の言葉だ。この世界はパズルだそうだ。そして、一人一人の人間には必ずはまる場所がある。それを『居場所』というそうでな。自殺寸前の俺に、俺の師は俺のはまる場所―――『居場所』を教えてくれたんだ。師が居なかったら俺はもう死んでいただろう。そして、師は言った。俺の居場所が無くなったって事は世界は平和―――ピースになった、、、と。」

「それで、どうして自殺しようと、、、」

「、、、、。」

 バラライカの何気ない質問にリーパーは黙ってしまった。

「ご、ゴメン!!何か言った!?」

「いや、何も言っていない!悪いな!ははは、、、。」

 リーパーは愛想笑いを浮かべる。

「私は紛争で両親を亡くしたの、、、。」

「そうか。」

「それで、親ロシア派の兵士に復讐する為に軍に入隊したの。」

「ほう。それで。」

「私は死にそうな位苦しい訓練を乗り越えて兵士になった。そして、小隊に入った。そしたら、自分みたいなのがたくさんいた。皆もそんな感じなんだなって。」

「まぁ、ウクライナ紛争の戦死者は民間人にもいたからな。」

「そして、親ロシア派に捕まって、殺される前に皆は私にこう言ったわ。『ウクライナを平和にするんだ。』って。それが皆の遺言だったわ。」

「そいつは残念だったな。」

「そして、私は、、、その、、、ああなって、、、」

「あぁ、犯された時のアレね。」

 リーパーはバラライカをからかう。

「うるさい!私はまだ処女だ!」

「ハッ!俺も『チェリー』だよ。」

「あんたの事何か知らないわよ!!でも、、、。」

「でも?」

 少しの間だけ、沈黙が訪れる。バラライカの心臓の鼓動は早くなっていく。

「でも、、その、、、。それでも、、、。一応はあんたに感謝してるんだからね、、、。」

「ほう。それはどうして。」

「一応助けてくれたし、、、。あんな私に、、、この世界で生きる希望をくれたから、、、、。」

「え?最後の言葉が聞こえなかったなぁ?」

「う、うるさい!もう言わないわよ!!」

 リーパーはまた、バラライカをからかう。

「まさかテロリストが1人の少女に生きる希望を与えるとはね、、、。これは映画にしたら面白そうだ。」

「聞こえてたじゃない!」

「フッ、俺は嘘つきなんでね。」

 やはりリーパーにも聞こえていたようだ。

「俺は寝る。あまりうるさくするなよ。」

 リーパーはベンチを立ってすぐそこの草が丁度よく生えた所に寝転がった。


「もう寝たかな?」

 バラライカは横たわるリーパーに近づいて耳を近づける。

『ゴロン』

「ヤバッ!」

 しかし、ただ寝返りを打っただけだった。

――――危ない危ないって、何やってんの私!?でも、、、。何かこいつ、、、、。いい匂いがする、、、。

 リーパーからは、何とも言えない『いい匂い』がした。戦場にいる兵士の匂いとは思えない。

――――うぅ、、、。何か眠くなってきta、、、、。

 バラライカはリーパーに抱き着くように寝てしまった。その、、、。しっかり抱き着いて、、、色んな所が当たりながら、、、。

「フフフッ、あれは邪魔しない方が良いかもね。」

 チェブラーシカが二人を呼びに来たが、何かを察したらしい。二人をそっとして、帰った。

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