第5話 ブリーフィング

 それは、突然の事だった。

『ソコロフ!ソコロフは至急司令官の元へ!』

 基地のスピーカーから大音量でソコロフが呼び出された。

「ソコロフは何かやらかしたのか?」

 リーパーが不思議そうにケレンスキーに聞く。

「知らね。てか、興味ねぇ。」

 ケレンスキーは真剣な眼差しでその、、、成人用雑誌を見つめる。

「そういうのを堂々と観るのがウクライナの風習なのか?」

「そんな訳無いでしょ。はい。これは没収。」

 チェブラーシカがケレンスキーの『読んで』いた本を没収する。

「あぁ!返せ!俺のコレクションの一部!」

「いや、、、。まだあるのかよ、、、、。」

 ケレンスキーとチェブラーシカの『本』を巡っての攻防戦を、リーパーは冷めた眼差しで見てた。まぁ、元々犯罪者のような目つきなのだが、、、。

 そんな中、ソコロフが部屋に入ってきた。

「1時間後に出撃だ。45分で準備を整えろ。」

 ソコロフが部隊の皆に出撃する事を知らせる。

『了解!』

 ソコロフの部隊は一斉に出撃の準備を始める。しかし、リーパーは一歩も動かなかった。

「何してる?お前も出撃だぞ。」

「ここは『客』に仕事をさせるのか?」

「人手が足りないんだ、、、。頼む。」

 ソコロフが両手を合わせる。

「はいはい。分かった分かった。」

 リーパーも自分のヘリに戻って出撃準備を整える。

「何かあるんですか?」

 ヘリのパイロットのコリブリがゲームをしながら聞く。

「俺も戦闘に参加だとよ。」

「はぁ?だって、、、あなたは、、『客』のはずじゃ、、、、。」

「人手が足りないから俺も行けだとよ。全く。酷いホテルだ。」

 グチグチ言いながら支度を進める。9mm弾の入ったグロックのマガジンをポーチに詰め、グレネードとスモークをバッグに詰めた。

「一応『アレ』も持っていくか。」

 そして、小さな金属の箱を胸のポーチにしまった。


 準備が終わったリーパーはソコロフの所へ戻る。そこにはもう、準備が終わったソコロフの部隊全員が揃っている状況だった。

「皆揃ったな。」

 ソコロフは全員いることを確認する。

「おい、待て。」

 リーパーがソコロフに言う。

「何だ。」

「俺は『客』なんだ。もちろん無料タダで仕事をするのはゴメンだ。報酬をよこせ。」

「あぁ、、、。そうだな、、、。旨いディナーはどうだ?もちろん生きて帰れたらな。」

「もちろん三ツ星レストラン以上だよな?」

「あぁ、、、。そうだ、、、。旨いミートパテ《ハンバーグ》とかのディッシュとかを出してやる。」

 ソコロフは頭を抱えながらそう言う。

「それじゃあ交渉成立だ。破ったらストライク・ブラックに『イエローケーキ』を使ったブツをテイクアウトして送り付けてやるから覚悟しろ。」

 リーパーは軽く脅しをかける。イエローケーキとは、簡単に言うと、核兵器作成能力があるウランを多く含んだ黄色い粉末の事である。それを使った『ブツ』とは、もう核兵器の事しか無いだろう。

「それじゃあ、任務を発表する。今回の任務は敵の拠点から、捕虜を確保する仕事だ。」

 ソコロフが指令書をピラピラさせながらそう言う。

「敵の装備と兵器は?」

 リーパーが指令書を指さす。

「GPSで確認したところ、T-14戦車が2両ほど確認されている。」

「そうか。じゃあ問題無い。」

 リーパーがそう言うと、周りの皆は固まる。

「いや、、、。戦車だぞ、、、。」

「あぁ。そうだが。」

「問題無いのか?」

「あぁ。あんなのは小回りが利かないからな。数が少なかったら俺達の方が有利だ。」

「嘘だろ。」

 ケレンスキーはリーパーの対応に驚いた顔をしている。

「で、頼みたい事があるんだが。」

「どうした?」

 リーパーはソコロフに言う。

「作戦決行時間は23.00にしろ。お前達は対戦車戦には慣れていないから、隠密行動スニーキングで行く。全員の銃には消音効果のあるサプレッサーを着けろ。」

 サプレッサーとは、銃声を消すことができる筒状の物で、銃口の先端に付ける。

「しかし、これは一刻も争う事態なんだぞ!」

「そういう時ほど慌ててはいけない。」

「そ、、、そうだな、、、。時間変更は俺が司令部に言っておく。」

 ソコロフは、少しだけ落ち着きを取り戻す。

「戦車がいるって事は、RPG《ロケットランチャー》と対戦車地雷を一応持って行かないといけないわ。」

 チェブラーシカがRPGの弾頭を両手に持ってきた。

「おいおい、そんな危ないモンを屋内に持ってくるんじゃない。」

 ケレンスキーがチェブラーシカを非難する。

「ゴメンなさい。でも、、、こうして、、、挟めば、、、クッションになるから、、、大丈夫、、、で、、しょ?」

 チェブラーシカは、自身の両胸の『ツァーリボンバ』でRPGの弾頭を挟み込む、、というか押し込んだ。

「あぁ、来世はRPGの弾頭になりてぇ、、、。」

「あのRPGの弾頭はさぞ幸せモンだろうよ、、、。」

 部隊からは、次々に『来世RPG弾頭志望』の声が上がった。なぜ神は俺をRPGの弾頭にしないで人間にしたのか?そして、チェブラーシカの胸の弾頭を非難する声などが上がり、作戦会議どころでは無くなってしまった。が、

『ババババババババ!!』

 リーパーがG18Cをフルオートで射撃した。床には9mm弾の跡が残っている。

「そんな事は後にしろ。今は作戦会議だ。」

 貧乳大好きロリコンむっつりリーパー(そういうレッテル)は『来世RPG弾頭志望』のデモを一瞬で鎮圧した。

「あいつはソ連軍お手上げだろうよ、、、。」

「あぁ、、、。怖ぇ、、、。」

「Oπ、Oπ、、、。おっぱい」

 周りはすっかりリーパーを怖がり(?)誰も喋らなくなった。

「もう良い。一人で行ってくる。」

 呆れたリーパーは、作戦は単独で行う事を決意した。

「そんなの無茶だ!」

「流石に止めておけ。」

「おっぱい」

 皆がリーパーを止める。しかし、リーパーは、

「俺はテロリストだ。死ぬときは死ぬ。まぁ、使い捨て要員だからな。それに、」

 リーパーは親指で自分を指さす。

「俺はリーパー《死神》だからな。」

「俺は部隊を守る責任がある。俺は認めない。」

 ソコロフが立ち上がってリーパーに言う。

「俺はお前の部隊じゃない。」

「前も言ったろ?お前は俺の部隊だ。だから俺が認めない。」

「お前達じゃあ危険過ぎる。」

「それはこっちのセリフだ。」

「そんなに認めないか。じゃあ、こうしよう。俺が単独で行く。もしも、やばくなったら俺が連絡して、近くに待機したお前達誰かの『スナイパー』と、増援部隊が俺を助けに来る。それなら良いだろう?潜入も上手くいく。」

「そうだな、、、。それなら許可しよう。」

 ソコロフはリーパーの作戦をやっと許可した。

「まぁ、お前達は動くことは無いだろう。」

「そうしたいモンだ。」

 ソコロフは笑いながらそう言った。


 

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