第4話 Because I am Alive.
リーパーはサーシャの店で買った花束を持って、基地のソコロフの部隊がいるところへ向かった。
「おい、どうしたんだ?その花束」
休憩中のソコロフが何気なく聞く。
「安いし綺麗だから買ってきた。」
リーパーは大量の札束で買ってきた花束をそこらに転がっていたペットボトルの口をナイフで切り落として広げ、花の尻を斜めに切って、水を注いで花束の『黄色いユリ』を飾った。まぁまぁなフラワーアレンジメント能力である。
「どうだ?綺麗だろう。」
リーパーはそれを窓辺に飾った。太陽の日に照らされて、なお綺麗に見える。
「どこで買ってきた?」
「ん?街の花屋だ。大男と幼女のな。」
「それは『合法的』な、、、?」
ソコロフが恐る恐る聞く。
「その娘の父親はウクライナ軍だったらしいが殉職したそうだ。だから、『友達』の大男が面倒を見ているそうだ。」
「何だか悪い事をしてしまった気がする、、、。」
ソコロフは偏見で人の陰口を言ってしまった事を深く反省する。
「その娘と親父の為にも頑張らないとな。」
リーパーが窓の外を眺めながら言う。
「そうだ。この戦争を一刻も早く終わらせて、ウクライナを平和にする事が死んだ奴らへの礼儀ってやつだ。」
ソコロフはそう言うと、M4マガジンに5.56mmの弾薬を詰め込む。カチャカチャと音がして、一発ずつマガジンにNATO弾が入っていく。
「死んでいった人間が残すものは結構大切な物が多い。そして、失って初めて気が付く事もな。」
リーパーも自分のグロックマガジンに9mm弾をカチャカチャと詰め込む。
「俺もそれには共感する。」
「そうか。」
「俺はこの戦争で家族を失っている。俺が任務の時に迫撃砲の餌食になって木っ端みじんだ。でも俺は涙を流さない。」
ソコロフは、自分の胸のポーチから家族の写真を出した。その写真は色あせていて、ソコロフとその妻と思われる人物。そして、息子と娘が写っていた。そして、皆笑っている。
「それは何故だ?」
「俺の他にも戦争で家族を、、、大切な人を亡くしている人はいる。それはウクライナだけに限った事じゃない。俺がいちいち泣いていたら家族に失礼だし、恥ずかしいだろう?」
「知らんな。死んだ人間は死んだのだ。しかし、その『大切な人』は生きている人間の心の中でだけ生き続けるのだろう。」
リーパーはマガジンに弾薬を詰め終わった。そして、もう一つの空マガジンを取り出して9mm弾を詰め始める。
「なぁ。お前は誰かを失ったのか?」
ソコロフは黙々と弾を詰めるリーパーに問う。
「知らん。そんな事は忘れてしまった。」
「お前の心の中では誰も生き続けていないのか?」
「そんな事をいちいち気にしていたら心の中が死人であふれてしまう。しかも、俺はテロリストだ。そんなんじゃ、仕事は務まらない。」
「お前は強いんだな。」
「いや。俺は一番弱い。人を殺す事でしか自分の存在を証明出来ないからな。」
リーパーはシベリアの荒野のように冷たい答えをした。
―――――お前は使えねぇんだよ。
――――死ね。
―――――――、、、はね。、、、が生まれた時が一番うれしかったんだよ、、、。
―――ハイル・ヒトラー!!
――――――そして、僕は今。君のはまる所を教えに来たんだよ。
――――――――俺が、、、。どうして俺がこんな目に、、、。死にたい、、、。死にたい、、、。
「ハッ!!」
リーパーはいきなり目が覚める。リーパーは基地の『あのベンチ』で眠っていたのだった。そして、リーパーの顔には一筋の『何かが通った痕』が瞳に続いていた。
「俺は、、、今、、、。」
リーパーは起き上がる。空を見るともう星が見えていた。
「こんなところに居た、、、。もうご飯だよ。」
両胸のツァーリボンバを揺らしながら、チェブラーシカがリーパーを迎えに来た。
「何で俺を探しに来た?」
「え?だって、、、もうご飯だから、、、。」
「違う。飯などお前達で食っていれば良いのにどうして俺を探しに来た?」
「何でって、、、、。ご飯は皆で食べると美味しいから。って、、どうしたのいきなり?」
チェブラーシカは不思議そうな顔をしてリーパーを見た。
「いや、何でも無い。すまないな。わざわざ、、、。」
リーパーはベンチから立った。
「ありがとう。」
「どうした。いきなり。」
チェブラーシカのいきなりの言葉にリーパーは驚いた。
「いや、、、。私達とご飯を食べてくれるから。そのお礼。」
「飯くらい一緒に食ってやる。」
「いや、、。リーパーは一人でご飯を食べたい感じの人なのかなー、って。」
「どっちでも一緒だ。そんな事より早く行くぞ。ソコロフが待っているんだろ?」
なんだかんだ言ってリーパーが一番早く飯を食いに行こうとするのだった。
リーパーがソコロフ達が夕飯を食べているところに遅れて登場した。
夕食はすでに始まっていたのだ。ソコロフの部隊の隊員はワイワイ飯を食っている。
「遅いぞ。ナニをヤってたんだ?」
ケレンスキーがリーパーをバカにした。するとソコロフが、
「飯の時くらいそういうネタは止めろ!」
ゴツン。とM4A1のストックでケレンスキーの頭を叩く。
「痛ってぇーーーーー!!」
ケレンスキーの叫び声が基地中に響く。
「今度はハンマーが良い?鎌が良い?」
ソコロフが右手に鎌、左手にハンマーを持って交差させ、共産主義のシンボルを作る。
「頼むから粛清しないでくれ、、、。」
それを聞いたソコロフと周りの兵士はガハガハと笑う。
「じゃあシベリアのラーゲリに送り付けてやる。」
リーパーはボルシチを食べながらそうつぶやく。ラーゲリとは旧ソ連時代のシベリアにある強制労働施設みたいなものである。そこでは凍死や過労死。その他もろもろで毎日たくさん人が『楽園』に行ってしまう。
「面白い!ますます気に入った!」
そんな共産ネタでソコロフは大喜び。食事も盛り上がった。
この夜も遅くまで『会食』は続いた。
リーパーは自分のヴェノムに帰って、インターフェースでミーテングチャットに接続する。
「今日も遅かったな。」
と、EUの大統領がリーパーを注意した。
「何せ盛り上がったもんで、、、。」
「はぁ、、、。」
EUの大統領は呆れていた。
「さぁ、我々の今後の方針を話し合おう。同志諸君。」
マスターがミーテングチャットの司会を進める。
「ウクライナ方面では何ら異常無し。ただ、ロシア軍がどう動くか心配なところです。何としてもロシア軍の介入前に戦争を終結させましょう。」
リーパーがマスターに報告する。
「確かに。ロシアが絡むと厄介だからな。」
「ロシアとの全面戦争は避けなくては、、、。」
ミーティングチャットがざわつく。
「良かろう。親ロシア派に攻撃を仕掛けるのは君に任せよう。リーパー。」
「はい。部隊が整い次第侵攻を開始します。我々の力を敵に見せつけてやります。」
リーパーがマスターにそう報告したが、
「いけません。世界は殺し合いでは無く、調和と話し合いによって平和を築くべきなのです。」
美しい女性の声がリーパー達の意見に反対する。反対意見を言ったのは、黄色半分と白半分で、白いところになにやら色々描いてある旗の『バチカン』であった。
「それではどうやってウクライナの人々を救えば良いのですかな?女神官様。」
リーパーが嫌味を言うように聞く。
「反対意見の人達に話し合いでの和解を求めるのです。焦ってはいけません。少しずつ話せば心を開いてくれるはずです。」
女神官は嫌味を嫌味と受け取らないで素直に解決策を示した。
「親ロシア派は武器を持ち、罪の無い人々を殺して自分達の意見を押し付けました。これは神による裁き。そう、我々が粛清すべきなのです。」
リーパーは女神官の解決策をうまく回避した。そして、ミーティングチャットは過半数がリーパーの意見に賛同している。
「そのような事はあってはなりません、、、。」
「そんな綺麗事を言っているから二次大戦にもイタ公は負けたんだろうが。全く、イタ公は何も学ばないな。」
今度は逆卍、、、ハーケンクロイツが描いてある旗、、、。『ナチス』の代表『総統代理閣下』の『幼女』の声がバチカンを批判した。
「私達バチカンはイタリアではありませんが、、、。」
「『ローマ』って付いてんだからゴチャゴチャ言うな!無能が!」
「あなた達だって戦争には『二度も』負けたじゃないですか。それも一回はイタリアに。」
「うるせぇ!一次大戦は銃後の共産主義者とユダヤ人が悪いのだ!だからヒトラー総統閣下は共産主義者とユダヤ人を粛清なさったのだ。しかも、お前達だってエルサレムからユダ公を追い出したろう?十字軍で?」
バチカンとナチスの間で小さいながらも、第三次世界大戦が始まってしまった。
「今は我々もナチスに賛同してやろう。でも肝に命じておけ。これは『致し方なく』だ。分かったな?」
EUは『致し方なく』ナチスに賛同した。ヨーロッパ諸国は『ナチ・アレルギー』なのだ。
「はいはい。わかりましたよー。」
ナチスの総統代理はあっけない返事をした。
「それでは、ウクライナの件はリーパーに任せる。そして、状況は随時報告。それで良いかね?」
ミーティングチャットの多数決は、バチカン以外は『YES』の回答が表示された。
「それではウクライナの件は俺に一任させて頂きますよ。女神官様。」
嫌味のようにバチカンに言う。バチカンからは『はい』の一言も無かった。そして、リーパーの顔は狂気に満ちていた。
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