第18話 スカートでドロップキックすんじゃねえよ

 ディシェイド 朝 開拓地


「なんで目が覚めたら木が生い茂ってるんだ?」

 木遁でフライングディスクを作ってた翌日。朝食を終えた賢治とルナが洞窟から出ると、空いている土地が外側の森から半分ほど、一晩で生えた木に占領されていた。

 一晩で木が生えるなら、木材の心配はなくなったが。今度は土地に建設しても直ぐ森に侵食される心配が出てきた。


 開拓はルナが居れば、木を抜くのも加工するのも任せられるが。この一晩で木が生える条件を見つけないと、最悪家の下から木が生えて住居を失ってしまう。

「ルナ、木が生える条件を探そう。条件を知って対策しないと、安心して寝られそうにないからな」


「ルナ、知ってるよ?」

(俺の考えに使った時間が無駄に…)

「そうかそうか。やっぱルナは偉いなー!」

 撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で撫で。

「えへへー」


「つまり道じゃない何もない土地に生えて、畑や建物があったりしたら生えないと」

「うん!」

 賢治は足から大地に魔力を流し、残りの平地を掌握。その底なしの魔力を存分に使って火魔法と火遁を同時に使用。土が沸騰するまで加熱し続けた。


「あー、力技で魔法を使うと疲れる」

「賢治様ー、これは?」

「んー?地面を溶岩にして自然に冷やして、土じゃなくしたら木が生えるかの実験」

「なるほどー」

「かなり疲れたし、地面が冷えるまでメタリカに帰るか?風呂に入りたい」

「うん!ルナも、ルナも一緒に入る!」

「おーし。家に帰ったらルナには風呂のスイッチを押してもらおうかな」

「はーい!」


 賢治は洞窟に入り荷物を纏めると、異世界転移でメタリカの自宅に帰還。ルナも口寄せで呼び出して風呂に入った。



 風呂から上がると左腕の腕時計型携帯端末で、ダリアとリンダにメッセージを送っておく。


 帰宅後、風呂上がりな今。


 送信してから10秒もせずに、ダリアとリンダの2人から同時通話がかかってきた。

「おかけになった端末は、現在使われております」

「賢治、おかえりなさい。ルナちゃんも連れて出てこれない?前はリンダが、話が出来なかったと言って拗ねて大変だったのよ?」

「お姉ちゃん、私そんな事言ってないから!」

「貴方の遺品になるはずだった荷物もリンダが預かってるの。1度うちまで取りに来てくれないかしら」


「俺、風呂上がり。今日、動かない」

「なんで片言風なのよ。いいわ、私がそっちに行くから。今度勝手にいなくなったら、縄でグルグルに縛って閉じ込めておくんだから」

「と、本当は自分がそうして欲しい私の妹」

「そっ、そんな事…ないわよ…」

(これ。俺と通話してなくても、2人で話せばいいんじゃね?)



 30分後もまだ通話に花を咲かせている双子をよそに、賢治はソファーでゴロゴロしていた。

 ルナは風呂が気に入ったので、長風呂中だ。

 ピンポーン。

「賢治、貴方の家に到着したわ。開けてちょうだい」

 そう。ダリアとリンダは通話しながら用意を終え。賢治の家まで移動してきたのだ。


「ええーーーーーーーーー…1度切るぞ」

 賢治は通話を切ると携帯端末を操作して、玄関の鍵を解除した。

「お邪魔するわ」

「お邪魔しまーす」

 勝手知ったる他人の家。ダリアもリンダも一直線に賢治がダラダラするリビングへと到達。

 ガチャっとドアを開ける音と共に、見目麗しい双子の姉妹が現れた。


 ダリアは髪を結い上げで白のワイシャツに濃紺のスラックス。リンダは白のワンピースを着ていて、今日は髪をストレートにしている。

 ドアを閉めると2人共ポーズを取り、いつもの様に服の感想を求める。

「あー、うん。いつも思うんだが、俺にファッションの感想とか酷じゃね?2人共似合ってるぞ。髪や爪の手入れに、ワンポイントにしたアクセサリーのさり気ない主張。それにボンキュッボンな体。やっぱお前らエロ双子ブァ!!」


 顔面に2人からのドロップキックをくらい、本日のファッションショーは中断された。

ダリアとリンダには敵意がないので、最強の守護者は気に留めず。ルナは呑気に風呂を堪能していて、使役として使役者も守る仕事をしていなかった。

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