第19話 ギリギリセーフ

 メタリカ 昼前 賢治の家


幼気いたいけな少年に、お姉さん2人がかりでドロップキックするって。なんて酷い奴等だ。俺の防御力は前より更に下がってるっていうのに」

 顔に2足のスリッパ跡を赤く染めた賢治が、犯人に文句を言う。


「ごめんなさいね。今の見た目に慣れてないから、つい痴漢撃退と同じ行動に出てしまったの」

「私達はエロいんじゃなくて、ナイスバディーなだけなの!乙女なんだから、表現には気を付けて!!」

「未婚の乙女が一人暮らしの男の家に入るなんて、これはもうエロ認定待ったなしだろう」

「その意見は却下します」

「その意見は却下よ」


 3人がワイワイガヤガヤ話しをしていると、風呂を堪能したルナがリビングに入ってきた。

「賢治様ー、お風呂上がったよー」

 風呂上がりで少し熱いけれど、お洒落もしたい。

 そんな少女の揺れる心からルナは袖のない、水色のゆったりとした服を着ている。

 ウルフカットの髪はまだほんのり湿っていて、このまま放置すれば服まで濡れてしまうだろう。

 ルナは手に持っているブラシを賢治に渡すと、賢治の隣に横座りして背中を向ける。


「はい賢治様。お願い」

「おう」

『はっ!犬耳少女!?』

 賢治は何もない空間から温風を出しながら、左手で髪を支えブラシで梳いていった。

「賢治!そんな少女に犬耳つけさせて、この変態ロリコン!!」


 リンダの罵倒に賢治が反応するよりも先にルナが反応し、レベル100の探索者ですらすくみ上がる殺意を放つ。

「………」

 ルナは沈黙して何もない語らないが。これは本気ではなく、イライラして漏れた程度の殺意だ。

(ルナの本気の殺意を浴びたら、おそらくレベル100の探索者ですら即死する)

 ダリアとリンダは恐怖にガタガタと震え。腰を抜かして座り込み、抱きしめ合うことでギリギリ耐えていた。

 床は濡れていない。ギリギリセーフだ。


「ルナ、抑えろ。この双子のお姉さん達を風呂に連れて行って、俺がお前にコスプレさせている変態ではないと証明してこい」

「うん」

 怒りを押し殺した声でルナは返事をすると、まだ硬直しているダリアとリンダを肩に担いで運んで行った。


「やれやれ。マッケンジーを含め3人には出会った日から、見た目で相手を見くびるなと教えてきたんだがな…まだまだひよっこか…」


 5分ほどしてルナが1人で戻ってきたので、再び魔法で髪を乾かす。


「2人はどうした?」

「酷く怯えてたから、そのままお風呂にいれてきたよ。体があったまれば体の震えも納まるんじゃないかな?」

「そっか、ご苦労さま。こっちにおいで、髪を乾かす続きをしよう」

「うん!」


(2人が風呂から上がったら、本当の事を話すか……少しため……あの2人なら試さなくてもいいか)


 ダリアとリンダに真実を語ろか考えながら、火と風の複合魔法でドライヤーを再現してルナの髪を乾かす賢治。


「ふふーん」


 ブラシの感触が気持ちいいのか鼻歌を歌うルナに心を癒やされながら今後の展開について考えていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る