第15話 転職後初 スキルレベルアップ
ディシェイド 昼 ルナの洞窟前 開拓地
ルナに任せた木を抜いて1箇所に積む仕事は終わり。今は賢治が穴に魔法で土を出して埋めては、魔法袋から出したスコップで叩いて踏んで固めている。
「ふぅー、そろそろ時間もいいし。昼飯にするかー」
左手の時計で時間を確認したら既に13時を過ぎている。
抜いた木の枝葉と根を落とし、洞窟の大広間に移動させていたルナを捕まえると。賢治は昼食の弁当を2つ取り出して、片方をルナに渡す。
「いただきまーす!」
ルナの声に賢治も小さく合掌すると弁当に箸を伸ばす。
ステータスが極まっているルナはメタリカに行った初日から箸まで使いこなし、タルタルソースと唐揚げ中心のタル唐弁当を綺麗に食べている。
「しかし、予想以上に上手くいかないもんなんだな、開拓って。まさか木があそこまで硬くて伐採出来ないなんて…」
「ルナもこの辺の木は簡単に折れるから、賢治様のステータスだと歯が立たないなんて思わなかったの」
2人は1歩目から予想外の結果になっている、ディシェイドでの開拓について相談していく。
「これは、このまま2人で試行錯誤して続けるか、誰か相談する相手を見つけて続けるかしないとな。ルナはどっちがいい?」
「賢治様が一緒ならどっちでもいいけど、悪い人は嫌!」
「はははっ、悪人は俺も嫌だなぁ」
運ぶ前の丸太に座りながら、2人は向かい合って昼食を楽しんでいた。
昼食後はルナの丸太運びが終わったので、賢治は魔法で土を出すだけで、踏み固める作業はルナが請け負った。
幼女の体重でも亜音速踏み踏みの効果は高く。魔法で風の制御もしながらなので、砂埃もなくルナの作業だけが片付いていく。
賢治も負けてなるものかと、魔法に注ぐ魔力量を増やし。遠く複数の穴に、これまでの何倍もの量の土が盛られていく。
それでも作業速度でルナに負けて、テーブルに出したケーキとジュースで時間を稼いでいる。その間に賢治は魔法の遠隔発動で、地平線まである穴に土を盛っていく。
時間稼ぎをしても最後50の穴はルナに待ってもらいながら、全力で土を出し続けた。
「ファイトーッ!」
ルナの声援を背に受けて。男賢治、見事最後までやりきった。
【スキルレベルアップ。土遁がレベル2になりました】
【土魔法がレベル2になりました】
【スキル遠隔発動を習得しました】
【スキル同時発動を習得しました】
【隠しスキル全知がオープンされました】
ステータスには土魔法と、使ってなかったのに土遁のレベルが2になり。2つのスキルを得ていた。
これは賢者の全知スキル。半径10メートル以内の全てを知る、で。ステータスオーブなしでもステータスを見れるし。ありとあらゆる情報が自動で集積されて、後から探して見る事も可能という。範囲以外は破格のスキルだった。
賢治はこの全知に知らされて、全知のスキルがあったと知った。
「うおっ!」
「敵っ!?」
賢治が全知から齎される通知に驚いた瞬間にルナが警戒態勢に入り。賢治を抱えて洞窟内まで一瞬で走った。
「賢治様、怪我はない?」
当然賢治に怪我はなかったが。腹にラリアットに近い抱え上げをされて、一瞬で長距離を移動した為に衝撃と重力と慣性でダメージを受けていた。
ルナは大切な人を守ろうとしただけなので、賢治は大丈夫だと言って微笑みたかったが。ダメージが大きすぎて、そのまま気絶してしまった。
「賢治様?賢治様、死んじゃいやー!!」
ルナは賢治が死んでしまうと勘違いし、賢治の肩を掴んで一生懸命前後に揺さぶる。
それをルナのステータスで全力で行うものだから、賢治の生命力は一瞬で枯渇。
【スキル復活を取得しました】
賢治は膨大な魔力を代償に生命力1で復活するスキルを取得。
全知の通知がルナに届くはずもなく。ルナは泣き疲れるまで、賢治の肩を揺すり続けた。
【スキル頑丈を取得しました】
【スキル頑丈はレベルアップして頑健にスキルアップしました】
【スキル生命力自動回復を取得しました】
【スキル生命力自動回復はレベルアップして再生にスキルアップしました】
【スキル再生はレベルアップして復元にスキルアップしました】
【………】
【……】
【…】
こうして賢治の、ディシェイド開拓の初日は終わった。
本人が気絶したまま生死を彷徨い、スキルのパワーレベリングをされながら。
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