第14話 木が伐採出来ないなら
ディシェイド ルナの洞窟 大広間
「あー、異世界転移すると最後に転移した場所か、そこから1番近い安全地帯に出る…のか?………おっと、口寄せ!」
メタリカではダンジョンではなく、跡地の地上部分に転移した。そして今回はうっかり賢治になったルナの家な洞窟の大広間に現れた。
賢治は一瞬思考の海に潜りかけたが、ルナの事を思い出すと口寄せでルナを呼び出した。
「賢治様、今度は直ぐに呼んでくれたね!」
(最初にディシェイドに来た時は何故か時間が狂っていたが。前回と今回の転移と口寄せに時間的誤差はなかった。少なくとも俺達の体感では時間の流れに差はないようだ…やはりダンジョンコアとの融合に、思ったよりも時間を使っていたのか。それとも僅かながらに時間まで移動していたのか…)
「賢治様ー!腐ってたお肉の処分と冷凍室の掃除、終わったよー!」
(あっ…)
賢治が口寄せの後に思考の海でバカンスしている間に、ルナはその嗅覚で悪臭に気付き。原因の除去と洗浄まで終了させていた。
「ルナ、ごめんな。せっかくの肉を台無しにさせてしまって」
「メタリカでもいっぱい謝ってくれたからいいの!」
「そっか、ありがとう」
「うん!」
「まっ、考えるのは後にして。早速開拓してみるか」
「うん!」
洞窟から出ると2人は1本の木の前に立った。
「今後は洞窟を拠点に洞窟前の森を開拓して、ドデカイ家と庭を作っていこう!」
「わー!」
パチパチパチパチとルナの拍手の音が響く中、賢治は魔法袋から斧を取り出した。
斧の柄を軽く握り、コツコツと木に斧を叩きつける箇所に当てている。
これは最初に目印になる箇所を決めておくと共に、スイングによる最適な高さを決める為に必要な伐採の準備なのだが…
「木、傷付かないねー」
軽くとはいえ何度斧で叩いても樹皮にすら傷付けられず、斧のフルスイングにすら無傷。
賢治はムキになって魔法袋から愛刀を取り出して木を斬りつけるも、ノートに爪で線を引いた程度のへこみした付かなかった。
「ルナ。この木々を折ったり引っこ抜いたり出来るか?」
とうとう賢治は自分での解決を諦め、幼女に頼る事にした。
「はーい、任せて!」
返事をしながら既にルナは賢治が悪戦苦闘していた木を引っこ抜き、上下にブンブンと振り回していた。
「終わったよー!」
「おお、ルナ凄いぞ!抜いた木はあの辺に置いといてくれ」
「はーい!」
(流石。あの時マッケンジーを、誰にも悟られずに一瞬で伸しただけの事はある。手加減して殺さなかったのに、だ)
ルナの頭を撫でながら反対の手で洞窟の入口から離れた場所を指差す。
メタリカで慣れたので一瞬で戻ってきたルナに驚く事もなく、賢治は次の指示を出す。
「ルナは入口から見える範囲の木を抜いて、さっきの場所にまとめて置いといてくれ。俺は空いた穴に魔法で土を出して埋めていくからな。役割分担で一緒に仕事をしよう」
「うん!」
ずっと独りだったルナは一緒という言葉に弱い。
賢治はまだその事に気付いていないが、ルナの心を守りたいと思う気持ちが、つい一緒にと言ってしまう。
孤独の後に温もりを知ったルナは無意識に愛を失う事を恐れ、褒められる事を…仕事を求めてしまっている。
ルナ自身も自分の家が賢治と一緒に建てた家になる事を望んでいる。
2人の自覚と無自覚が奇妙に噛み合い。開拓の第一段階の伐採…ならぬ、引っ抜きと穴埋めは順調に進んでいった。
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