第11話 メタリカでの深級探索者の立場

 マッケンジーの件が済むまで安易に異世界転移は使えないので、賢治はルナにメタリカを満喫させる事にした。

 ディシェイドの丘陵地と洞窟自体もルナが作ったそうなので。相談の結果、更地にして2人で木の家を造ろうと決まった。


 日中は出かけて魔道具の工具を買ったり遊びに出かけ。

 夜の空いた時間はインターネットで家造りについて調べ、プリントアウトしたり購入する書籍を選定していた。



 ギルド、警察、弁護士と。何の音沙汰もないまま20日が過ぎて、ダリアから連絡が入った。

「昨日マッケンジーは処刑されたわ。動機は私達を自分の女にするのに、貴方が邪魔だったから。名前が自分のパクリなのに、俺と同等とか生意気だからだそうよ。下らない理由で深級探索者を殺そうとしたのだから、当然よね」


 メタリカで深級探索者の存在価値はかなり高い。

 一握りの人間でしか到達し得ないダンジョンの深層。

 その最下層の100層に存在する通称ラスボスを殺せる人物。

 そこまでになって、ようやく深級探索者としてギルドから認められる。


 メタリカでは世界規模で見ると、ダンジョンはかなり簡単に現れる。

 そして内部のモンスターを間引きしなければ氾濫をおこして、ダンジョンの外へとモンスターが溢れてくる。

 そうならない様に実入りの悪いダンジョンはさっさと殺し。

 残すダンジョンも成長して手がつけられなくなる前に殺す。


 氾濫した100層の深級ダンジョンの被害は凄まじく、大陸ひとつからモンスター以外の生命が消滅するほどだ。

 それでも深級ダンジョンまで成長させても隠す地方もある。

 そんな時に人類最後の希望になるのが、賢治達深級探索者だった。


 1人いれば大陸の2割の人間は救える。

 そう言われている深級探索者を殺害しようとしたのだ、マッケンジーの異例の速さの処刑も理由としては納得出来る。



「そうか………だったらしばらく、ルナを連れて旅に出るよ」

「そう、風任せ?」

 5年近い付き合いで賢治の行動を予測するダリア。

「ああ、予定のない旅をするよ。気が向いたら帰ってきて、また旅に出るかもな」


「わかったわ。それと、私達にはもっと頻繁に連絡をちょうだい。貴方、仕事なら報連相は出来るのに、私生活だと全く連絡して来ないんですもの」

 賢治はメモに急いで書いてルナに見せる。

「賢治様ー、早く出発しましょーよー!」


「あー、すまん。これからまた外出予定なんだわ、切るぞ。連絡サンキューな」

「あつ、賢治。ちょっと…」

 プッ、ツーツーツー。


 旗色が悪くなったのでダリアのと連絡を切り、腕時計型端末の通信を切る賢治。

「ふぅー、ルナ助かった」

「どういたしまして!」


「せっかくだし、準備も済んでるから。このままディシェイドに行くか!」

「うん!」

 賢治はディシェイド用の魔法袋を持つと。

「先に行ってるからな。直ぐに口寄せするから、心配するなよ」

「うん!」


 元気のいい返事をしたルナの頭を撫でると手を離し。

「異世界転移」

 賢治はメタリカの自宅から姿を消し、直後にルナの姿も消えた。

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